[2017 Jリーグプレシーズンマッチ StubHub ワールドマッチ]C大阪1-3セビージャ/7月17日/ヤンマー
 
 C大阪に力の差を見せ付けたセビージャの中で、日本のサッカーファンをもっとも魅了したのは誰か。中盤で圧倒的な存在感を見せたMFステベン・エヌゾンジや2ゴールを挙げたFWウィサム・ベン・ヤーデル、一瞬の隙を見逃さず3点目を奪ったFWルイス・ムリエルもたしかに素晴らしかったが、「魅せる」という意味では間違いなくMFガンソだろう。
 
 後半から投入されたブラジル人司令塔は、トップ下のような位置に入る。すると48分、さっそく観衆を沸かす。敵陣中央あたりでボールを持ったレフティーは、左足のアウトサイドでスルーパス。C大阪は8人が引いた形で守備陣形を組んでいたが、まるで時間が止まったかのように誰もが動けず、完全に最終ラインの裏を取られた。
 
 パブロ・サラビアがGKとの1対1を失敗してゴールには繋がらなかったが、ガンソはパス一本で決定機を創出したのだ。
 
 そして53分には、再び規格外のプレーを繰り出す。自陣のセンターサークル手前でボールを持つと、縦にロブ気味のスルーパス。左サイドから中央に動き出していたホアキン・コレアが抜け出し、そのままGKと交錯してPK奪取に繋がった。
 
 その他にも正確なパスや独特のキープなどを随所で見せ、抜群の攻撃センスを披露したガンソ。試合後には「セレッソは良いチームだったけど、僕らはポゼッションを支配できた。だから3点取れた」と語った27歳の天才MFは、間違いなくこの日もっとも“印象に残る選手”だった。7月22日の鹿島戦でも括目に値する。
 
 2008年にサントスでプロデビューしたガンソは、2010年にはブラジル代表にもデビュー。「セレソンの新たな10番」として注目を浴び、当時はクラブと代表で同僚だった親友ネイマールよりも高い評価を得ていたほどだった。2011年にはコパ・リベルタドーレス優勝に貢献し、クラブワールドカップで来日を果たしている。
 
 しかし、フィジカルと戦術が重視されるモダンフットボールに逆行するかのような奔放かつゆったりとしたプレースタイル、そして度重なる怪我もあって、サントスとその後に加入したサンパウロでキャリアが停滞。ミラン、マンチェスター・U、インテルなどに引き抜かれる話はすべてご破算となり、バルセロナに移籍してスター街道を駆け上がったネイマールとは評価が一気に逆転した。
 
 2016年夏のセビージャ移籍でようやく欧州参戦を果たすが、16-17シーズンの先発出場はわずか8試合。記憶に残る活躍は、1ゴール・1アシストを記録したコパ・デル・レイ4回戦第2レグのフォルメンテラ戦、2ゴールを挙げたリーガ33節のグラナダ戦くらいで、総合的には「期待外れ」という声が妥当だろう。
 
 創造性とテクニックは相変わらずワールドクラスのガンソだが、ハードワークやインテンシティー、そして守備力が大きな問題。C大阪戦でもオフ・ザ・ボールの走り込み、ボールロスト後の即時奪回を目指す激しいプレスなどはほぼ皆無だった。
 
 C大阪戦のセビージャ選手たちは、プレシーズンが始まって間もないうえ、高温多湿だったため、“抜いて”いた感が否めない。しかし、要所では本気に近いダッシュや激しい球際を見せており、ガンソの“緩さ”はかなり際立っていた。
 
 今夏からセビージャを率いるエドゥアルド・ベリッソは、アルゼンチン代表に転身した前任のホルヘ・サンパオリと同じく、名将マルセロ・ビエルサの薫陶を受けた指導者。激しいマンツーマンディフェンスを軸とした攻撃サッカーを志向し、選手たちに何よりもハードワークを求める。
 
 しかし、少なくともC大阪戦を見る限り、攻撃はサンパオリ時代よりも縦志向が弱まり、よりポゼッションに重きを置いている印象を受けた。本人が守備意識を改善するか、周囲がバックアップ体制を取れば、ガンソにも生きる道はあるかもしれない。
 
 かつて「ネイマール以上」と評された規格外の才能が、このまま欧州トップシーンから消えてしまうのはあまりにも惜しい。ガンソとセビージャの新シーズンに期待したい。
 
取材・文:白鳥大知(サッカーダイジェストWEB)
 
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