悪夢のような2年間を経て、トマシュ・ロシツキが帰ってきた。
 
 スパルタ・プラハに所属するチェコ代表の英雄は現地時間7月14日、ブラックバーン(イングランド3部)とのプレシーズンマッチに71分から出場。307日ぶりにピッチに立つと、中盤の底まで下りてビルドアップの起点となり、時折鋭いスルーパスを繰り出すなど何度か“らしい”プレーを披露した。
 
 長く、そして険しい道のりだった。アーセナルでの最後の1年となった2015−16シーズンは、右膝をはじめ度重なる故障に苦しみ、FAカップに1試合(それも19分間)出場したのみ。不完全燃焼のまま、10シーズンを過ごしたノースロンドンを去った。
 
 EURO2016には何とか間に合ったものの、コンディションが万全でないのは明らかだった。実際、クロアチアとのグループステージ第2戦の終盤に太腿を痛めて無念の離脱。チェコが早々に敗退する一因ともなり、悔やんでも悔やみきれない大会となってしまった。
 
 心身ともに傷ついたロシツキに声を掛けたのが、かつて8歳で入団し、ドルトムントに移籍するまでの約13年を過ごしたスパルタ・プラハだ。15年半ぶりに復帰した“心のクラブ”での復活を、サポーター、そして何より本人が心待ちにしていたが、待ち受けていたのはまたしても怪我との闘いだった。
 
 昨年9月、ムラダ・ボレスラフとのリーグ開幕戦で、いきなりハムストリングを痛めて開始早々に途中交代。出場時間はまたしても「19分」だった。
 
 さらに、アキレス腱も痛めてその後は1試合も出場できない状態が続いていたロシツキは、今年の3月に大きな決断をする。来シーズン以降を見据えて、アキレス腱の手術に踏み切ったのだ。
 
 今年10月で37歳となるロシツキが、現役にこだわるには理由があった。「ひどい怪我を負ったにもかかわらず、なぜ諦めなかったのか?」という現地メディアの問いに対して、次のように答えている。
 
「僕は負けず嫌いなんだ。スパルタでチャンピオンズ・リーグ(CL)に出る。そのために戻ってきたのに、昨シーズンはCL出場権(2位以内)を逃してしまった。今シーズンはそこを目指して戦う。それが大きなモチベーションになっている」
 この背番号10の長欠という誤算もあり、16−17シーズンは3位に終わったスパルタ・プラハ。新シーズンはヨーロッパリーグの予選に出場する。つまり、ロシツキが目標とするCLのピッチに立つためには、少なくともあと2年は現役を続ける必要がある。
 
 代表戦を除けば、2年間で19分ずつ、合わせて38分間しかプレーしていない満身創痍のMFにとって、それは簡単なことではないだろう。だが、前述のブラックバーン戦(奇しくも19分間の出場だった)の感触は、悪くなかったようだ。
 
「まだ万全じゃないけど、良くなっている。怪我のこともあるし、年齢を考えても現役を続けるのは大きなチャレンジだ。でも、見通しは明るいよ」
 
 チェコのレジェンドは、まだユニホームを纏って戦い続ける決意だ。
 
文:ワールドサッカーダイジェスト編集部