[J2リーグ24節]京都3−1名古屋/7月22日/西京極
 
 2トップの高さをシンプルに使う京都と、パスをつないで崩したい名古屋。前半は両チームとも自らが志向するスタイルで攻撃をしかけて、シュートまで持ち込めていた。
 
 しかしハーフタイムを迎えた時点でスコアは2−1。後半は守備を修正した京都がリードしている優位性を生かし、追加点を奪って快勝している。
 
 多くの試合がそうであるように、この試合でも勝敗の行方を分けたのは両者の決定力だ。とりわけ、古巣を相手に2得点を叩き出した田中マルクス闘莉王のパフォーマンスは特筆に価するものだった。
 
 先制点となった1点目は、アーリークロスをケヴィン・オリスが折り返したボールをヘッドで押し込んだ。「僕もクシくん(櫛引)もボールウォッチャーになってしまった」(和泉)という中で、相手の背後からボールの落下地点をいち早く捉えている。
 
 その後、一旦は追いつかれるが、再びリードを奪ったゴールにも闘莉王が関わった。味方選手のシュートが相手DFに防がれたこぼれ球に反応。闘莉王のシュートが相手DFに当たったところを小屋松が押し込んでいる。そして後半の2点目。CKの2次攻撃をエスクデロと相手DFが競り合ったこぼれ球を、ワントラップから冷静に流しこんで試合の流れを大きく引き寄せた。
 
 いずれの場面でも際立つのが、闘莉王の冷静さだ。広大なピッチ上で最もプレッシャーが厳しいゴール前。相手の当たりや寄せは激しく、チャンス故に焦りが判断やプレー精度を鈍らせてしまうこともあるが、この男からはそうしたものが感じられない。心の中ではあるのかもしれないが、見ている限りは状況認知から判断、プレーの実行という一連の流れが実に的確なのだ。
 
 この日の2点目のシーンでもこぼれ球に反応した瞬間、横から相手DFが寄せてきていたが、太ももでボールを軽く押し出すようにスペースへ流すことでプレッシャーを回避し、シュートに持ち込んでいる。本人は「たまたまですよ」と多くを語りたがらないが、それはまるで点取り屋の嗅覚だ。
 この活躍で得点数は2008年の浦和在籍時に記録した11得点を上回る、12得点となった。J2得点ランキングも3位に浮上。36歳にしてキャリアハイを更新したが、まだリーグ戦の後半戦は始まったばかり。これからもFW起用が続く可能性が高く、さらなる得点が期待されている。

 京都で“FW闘莉王”が誕生したのは生みの苦しみからだ。開幕当初はビルドアップから攻撃を組み立てるサッカーを目指していたが、なかなか機能せず結果もついてこなかった。
 
 そんななか、8節・愛媛戦を前に負傷離脱していた闘莉王が復帰。その1週間前には大型FWのケヴィン・オリスも復帰しており、タイミングが重なったことで布部陽功監督は戦い方を2トップの高さを生かすキック&ラッシュへと切り替えた。
 
 そこから11試合負けなしなどチームの建て直しには成功するのだが、古典的なスタイルの採用に否定的な声も存在する。
 
「個人頼み」「発展性が無い」「見ていて面白くない」。それらは必ずしも間違いではない。組織的な戦いや娯楽性を求めるのなら、もっと楽しい90分を提供してくれるチームが他にある。
 
 ただ、今の京都はこれで戦っていくと覚悟を決めた。それは開幕からの紆余曲折やチームの現有戦力を踏まえたうえでの判断だ。闘莉王もメンバーリストに記載されるポジション表記をDFに戻したが、FWとしてのプレーを受け入れている。
 
 すべては、チームをJ1へ昇格させるため。試合後、「今日の勝利の喜びよりも、もっとやらなきゃという気持ちが強い?」という質問に対して間髪いれずに「そうですよ!まだ喜べる順位じゃない」と語気を強めている。
 
 今季、クラブはJ1昇格へ向けた勝負のシーズンと位置付けて、多くの予算を投入した。残念ながら現在はそれに見合った結果を出せていないが、「このままでは終われない」と彼らのプライドが声を上げている。不恰好な戦いでもいい。混戦J2に食らい付こうとするチームを、前線で牽引する男から目が離せない。
 
取材・文:雨堤俊祐(サッカーライター)