これまでもガンバ大阪ユースは、良質なプレーメーカーを輩出してきた。古くは二川孝広(現・東京ヴェルディ)や寺田紳一(現・横浜FC)、現在日本代表でも活躍する倉田秋や、5月のU-20ワールドカップで活躍した市丸瑞希もその系譜に名を連ねる。
 
 その最新版が、今年のチームにいる。巧さとクレバーさを持ち合わせた高校2年生、岩本翔だ。
 
 167センチと小柄ながら、テクニックは一級品。確かなボールキープから精緻なラストパスを供給し、好機を演出する。的確なポジショニングも魅力だ。中盤の底で絶妙な位置に付けてボールを引き出し、的確に散らしていく。パスを出すだけでなく、スペースを見つければ積極果敢に飛び出し、みずからゴールも狙う。トップチームの10番、倉田さながらのダイナミックなプレーを披露する。「遠藤(保仁)選手をガンバに入ってからずっと目標にしている」と本人は話すが、よりゴールに近いところでプレーできる。言わば、倉田と遠藤を足して2で割ったタイプだ。
 
 炎天下の群馬で幕を開けた日本クラブユース選手権。7月24日に行なわれたグループステージ・2節のジュビロ磐田U-18戦では、そのストロングポイントを随所で見せつけた。
 
 例えば、26分のシーンだ。ガンバユースの布陣は中盤がひし形の4−4−2。トップ下で起用された岩本は、「真ん中でも良かったけど、左サイドのほうがフリーでもらえると思ったんでそこにポジションを取った」と独自の判断で位置を変えていた。ここからMF丹羽匠(3年)に縦パスを配給すると、一目散にエリア内へ猛ダッシュ。惜しくもボールを呼び込めず、フィニッシュには至らなかったが、ポジショニングとパス精度、フリーランという彼の武器がすべて凝縮されていた。


 同点で迎えた後半アディショナルタイムには、MF足立翼(2年)に絶妙なスルーパスを通して、PKを誘発。決勝ゴールを導き、しっかりチームの勝利に貢献した。「技術は本当に高い。運動量も本当にあるし、賢い選手」と、ガンバ黄金期を支えた名CBの實好礼忠監督も賛辞を贈った。
 
 とはいえ、まだ未完成で、修正点は少なくない。フィジカルの弱さや得点力には磨きをかける必要があり、とりわけ本人は、フィニッシュの精度を課題に挙げる。指揮官が指摘するのも同じポイントだ。
 
「作りからラストパスのところまでは、よく関わってくれた。ただ、それにプラスしてゴールを要求している。そこが出てくればさらに良くなるでしょう」(實好監督)
 
「アシストとかはできているので、ゴールを決めて結果を残したい」(岩本)
 
 今季は2種登録され、U-23チームの一員としてすでにJ3で3試合に出場している。得点力が向上すれば、プロの舞台でも存在感を高められるはずだ。
 
 そして、直近の新潟国際ユースでアピールに成功したU-17日本代表でのプレーにも期待がかかる。日の丸を背負っての活動でさらにスケールアップ。10月のU-17ワールドカップのメンバー入りも現実的な目標として捉えている。
 
 2年前にガンバユースを巣立った兄、和希(現・関西学院大)の分までという想いもある。「背中を追いながら、お兄ちゃんを抜いてやろうと思ってずっとサッカーをやってきました」と語る岩本。メイド・イン・ガンバの“最新”傑作は、強い覚悟を持って、進化を続ける。
 
取材・文:松尾祐希(サッカーライター)