記憶に新しい、冬の選手権ファイナル。
 
 前橋育英は青森山田の後塵を拝したが、堂々の準優勝を飾った。その快進撃を支えた4バックは、いずれも2年生。今年のチームの土台を支える中軸だ。
 
 来春には、そのうち3人がJクラブの門を叩くかもしれない。左SBの渡邊泰基と、角田涼太朗&松田陸のCBコンビ。DFの同期が3人もプロ入りするというのは、過去を振り返ってもなかなかない事例だろう。
 
 3人の中でいち早くプロ入りを決めたのが、アルビレックス新潟への入団が内定した渡邊だ。左利きで181センチと高さがあり、機を見た攻撃参加から、正確なクロスボールを供給する。出身は新潟市。4歳からアルビレックスのスクールに通い、そこからU-12、U-15と下部組織で才能を育まれた。
 
「高校進学の時にいろんなチームから話をいただきました。それまでずっと同じ環境、チームメイトとやっていて、高校もそのままでは良くないなと思ったんです。一度は違う世界も見たい。必ず(新潟に)戻るという決意をもって、高校サッカーの前橋育英を選びました」
 
 ユース昇格を断った覚悟はホンモノだった。昨年度に不動の左SBに定着して頭角を現わすと、早々に古巣からのオファーを勝ち取ったのだ。「新潟から声をかけてもらった時点で、もう行くことに決めていた」と、いっさいの迷いもなく、入団内定を公表した。
 
 今週末に開幕するインターハイに向けては、「プロに決まった以上、周りと同じではダメだと思っています。率先してやるべき立場だと自覚しているので、そこのところをしっかり示したい」と、力強く宣言した。
 
 ディフェンスリーダーの松田も渡邊に続き、プロ入りの決意を固めている。176センチと上背こそないが、天性のバネと体幹の強さを持ち、空中戦では無類の強さを誇る。一方で、スピードとボールコントロールの巧さがあり、CBとSBの両方を高いレベルでこなす。
 
「光栄なことにオファーをいただけているクラブがあり、プロに行くという覚悟は決めました。でも、泰基のプロ入りが決まったことで、よりチームへの注目度は高くなったと思います。インターハイで良いプレーをすれば、もっと多くのチームから興味を持ってもらえるかもしれない。僕の中では可能性を広げるチャンスだと思っているし、この夏が勝負だと思っています」
 
 より自分への評価を高めて、選択肢を増やせるか。並々ならぬモチベーションでインターハイに臨む。



 そして、最後に角田だ。ふたりとは異なり、進路について迷っているという。
 
 空中戦の強さと正確無比な左足のキックを持つ彼は、本職のCBだけでなく、左SB、ボランチもこなせる守備のマルチロールだ。すでにとあるJクラブが獲得に本腰を入れているが、勉学でも優秀な彼は、大学という選択肢も捨てていない。
 
「正直、大学進学とプロが五分五分の状況です。大学に行ってその後の人生を考えるのか、すぐにプロに行って、将来的に海外挑戦なども考えるのか。サッカー選手としてチャレンジしたいという気持ちがある一方で、勉強も大事にしたい。そこは悩んでいます」
 
 もちろんプロ入りは彼にとっての夢。だが、現実にもしっかりと目を向けているからこそ、人生の岐路で揺れている。
 
「いまはなにを置いても、目の前のインターハイに集中をしたい。もしインターハイで活躍できれば、いろんなチームの話も来て、選択肢が増えるかもしれない。そこで本当に自分自身と向き合って、自分で決断したいと思っています」
 
 インターハイで結果を残せば、より多くのJクラブから具体的な話が来るかもしれない。さらに決断は難しくなるが、将来の可能性を広げたいと考えている。
 
 タイガー軍団の鉄壁ディフェンスを支える俊英トリオ。インターハイの優勝候補に挙がる前橋育英にとって、彼ら3人の活躍は全国制覇への試金石だ。
 
 それぞれが熱き想いを携え、勝負の夏に挑む。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)