元アルゼンチン代表FWのディエゴ・マラドーナは、自らが決めた“神の手”ゴールについて、「映像判定技術があればあのゴールは生まれなかった」と語った。現地時間7月25日に『FIFA』がサッカー界のレジェンドの言葉を伝えている。
 
 FIFAが触れたのは、1986年のメキシコ・ワールドカップ準々決勝のイングランド戦で生まれた衝撃のゴールについてだ。スコアレスで迎えた49分にマラドーナは、ペナルティーエリア内で上がったルーズボールに反応。相手GKピーター・シルトンと競り合った際に手でボールを突いてゴールネットを揺らした。
 
 この後世に語り継がれる伝説のゴールについて問われたマラドーナは、「テクノロジーの使用を支持するときは、いつもあの神の手ゴールを考える。そしてもちろん、テクノロジーがあれば、認められなかっただろうとね」と、現在なら生まれ得なかったものだという見解を示したのだ。
 
「別のシーンでもそうだ。俺は90年のワールドカップでも、手を使ってボールをゴールライン上で止めた。ソビエト連邦との試合でね。幸運にも主審は見ていなかったし、当時はテクノロジーも使えなかった。しかし、今なら話は変わっていたはずだ」
 
 今ではビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)やゴールライン・テクノロジーなどが、世界各国で普及しつつある。今年6月のコンフェデレーションズカップでは、フル代表の国際大会では初めてVARが採用されてもいた。
 
 しかし、その一方で判定に時間を要し、さらに決定の経緯が明確に示されないことなどから不満の声は根強く、フランスのとある審判員は、「試合から人間性が奪われ、魅力が減少する」と指摘していた。
 
 そうした状況をふまえて、アルゼンチン・サッカー界のレジェンドは、「後退するわけにはいかない」とさらなるテクノロジーの発展を推奨している。
 
「無駄な時間がかかるとか、不満が出るとか言うけれど、それは間違っている。不満が出るのは、与えられるべきじゃないゴールが認められたときだ。テクノロジーは透明性と高い質をもたらし、リスクを取って攻撃的にプレーしようとするチームを助ける」
 
 さらに「1966年大会で、イングランドがゴールラインを越えていないシュートで優勝したのを忘れちゃならない」と、宿敵のミスジャッジによるゴールも引き合いにも出したマラドーナは、「テクノロジーが進化していれば、ワールドカップの歴史や事件は大きく異なっていただろう。それら全てを変える時がきた」と訴えた。
 
 現役時代はもちろん引退後もFIFAをはじめとする巨大権力に幾度となく噛み付き、昨年2月にFIFAの会長選が行なわれた際にも、「私は、億万長者になるということに興味のない人物が会長になるところを見てみたい」と組織の在り方を批判していたマラドーナ。しかし、その後にジャンニ・インファンティーノ会長と急接近し、昨年12月にはFIFAの大使に就任するなど、いまや見事に体制側へと寝返っている。
 
 今回の“優等生発言”も、あのマラドーナが支持することによって、VARへの批判をかわし、導入を推す進めようというFIFAの狙いが透けて見える。かつての巨大な権力に立ち向かうマラドーナが懐かしい気もしないでもないが、いずれにしても相変わらず話題に事欠かない男である。

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