7月29日、全国高校総体(インターハイ)の1回戦は、土砂降りの大雨のなかで行なわれた。日本三景のひとつ、松島のフットボールパークで徳島市立との初戦に臨んだのが、優勝候補の一角を担う長崎総科大附だ。
 
 名将・小嶺忠敏監督率いる九州の雄は、序盤から球際の強さと抜群の機動性能を前面に押し出し、ペースを掴む。すると開始8分、荒木駿太が早々に先制点を挙げる。その後は巧みに裏を突いてくる徳島市立のカウンターに苦しむ場面もあったが、守備陣が落ち着いた対応を見せて封殺。一進一退の攻防が続いていた前半28分、再び荒木が決めてリードを広げた。

【インターハイPHOTO】東福岡、星稜、長崎総科大附、日大藤沢らが1回戦突破!
 
 やはりひときわ目を引いたのが、U-20日本代表で、今大会ナンバーワンFWの呼び声が高い安藤瑞季だ。貪欲にゴールを目ざす一方で、マーカーを引きつけて裏のスペースに絶妙なスルーパスを繰り出すなど、随所で“違い”を披露。後半30分、絶好の得点機でシュートがミートせず、そのこぼれ球をDF岩本蓮太が決めた際は、「うおー、まじかー!」と絶叫。チームは3−0の快勝を収めたものの、生粋の点取り屋は納得できない様子で、苦虫を噛んでいた。
 
 気づいただけでも8人のJクラブスカウトが視察に訪れていた大注目株。そんな安藤に試合後、今大会への意気込みや自身の進路などについて、直撃した。
 
――まずは今日の試合の感想からお願いします。
 
安藤「自分自身は点が取れなかったんで悔しいですけど、アシスト(1点目)やチャンスメイクでいいところでいいプレーができたので、良かったとは思います」
 
――3点目が決まる前のシーズンでは吼えてましたが?
 
「雨の中のサッカーで、どれだけ落ち着いてシュートを撃てるか。そういったところがまだまだだと感じます。うまく活かして、明日の試合につなげたいです」
 
――やはりストライカーとしては、無得点で終わるのは不甲斐ないと?
 
「もちろんチームが勝つのが第一で、そのうえで点が取れるのが一番。でも正直、負けてしまったときと同じくらい、素直に喜べないというのはあります」
 
――なかなか相手のマークも厳しい。そのなかで巧みに周囲を活かしている印象を受けました。快勝劇の立役者だったと感じます。
 
「僕の仕事はやはり点を取ることなんで……。たしかにマークはどの試合も厳しいですし、それをうまく使いたいという思いはあります。ファウルされて倒されても、何度も立ち上がって僕はゴールを目ざす。絶対に気持ちでは負けません。うーん、今日は焦りすぎた部分があった。もっと気負わずに、ゴール前ではシュートのことだけを考えてプレーすべきだったかなと」
 
――得点王を狙っている安藤選手にしてみれば、早くも2得点の荒木選手が大きなライバルとなりそうです。
 
「まだ初戦ですし、最終的に駿太より多く取ればいいわけですから。あいつにはひとつアシストしたから、『後半は俺にもっとボールを出せよ』ってかなり強めに言いました(笑)。それでけっこういいボールをくれてたんですけど、僕が決め切れなかった。反省です」
 
――個人的に今大会にはどんな意気込みで臨んでますか?
 
「得点王を目ざしているのは間違いないんですが、郷家(友太/青森山田MF)とかいろんなライバルがいるなかで、彼らに負けたくなって思いが強い。チーム内には駿太といういいゴールゲッターもいるんで、まずはあいつに負けないように頑張りたいです」
 
――自身に進路と絡めても、今大会は大事な位置づけなのでは?
 
「はい、やはりプロ行きたいって気持ちが強いんで。プロのスカウトの方もたくさん見に来ていると思うので、いろんなクラブの目に留まるようにアピールしたい」
 
――長崎予選では準決勝と決勝で決勝点を叩き出した。勝負強さは図抜けています。
 
「強い相手になればなるほど、僕のところにボールが回ってくると思うんです。そこで決め切れるかどうか。自信はある。僕のゴールでチームを優勝に導きたいですね」
 
――春先から年代別代表や日本高校選抜の海外遠征などで、忙しい毎日を送ったのと同時に、かけがえないの経験をしたと思います。自分のなかではどう消化していますか?
 
「ボールの受け方であったりロングランとところであったり、代表から戻ってくるといろいろみんなが訊いてきてくれたりするので、教えてます。駿太とかとも一緒にトレーニングのなかで話をしたりして。ただ僕個人が代表に行くのではなく、しっかりチームに還元することが大事だと思ってます」
 
――大会に臨むにあたって、小嶺監督からはどんな言葉が?
 
「インターハイは人生が変わる、と。すごく心に響いてます。ただ人生を変えるためには、自分たちが行動を起こさないといけない。そのことをよく考えて、一致団結して戦い抜きたいと思います」
 
――3年の夏。総科でサッカーをするのも残りわずかです。
 
「やはりクラブユースでは学べない、チームとして取り組む素晴らしさをいつも感じてきました。仲間と厳しい練習に耐えて、勝利を掴む。団結力、人と人のつながり、人間関係の大切さ。高校サッカーを選んで本当に良かったと思ってます」
 
――余談ですが、『高校サッカーダイジェスト』のインターハイ選手名鑑号で表紙を飾ってもらっています。出来栄えとしてはどう感じていますか?
 
「いやぁ、ありがとうございます。ただ郷家のほうがやっぱりそこでも目立ってるんで、負けたくないって気持ちが強くなりました(笑)」

取材・文:川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)