湘南ベルマーレに入団が内定した市立長野FWの新井光が、インターハイ初戦の鹿島学園戦で、その名の通り光り輝く出色の活躍を見せた。

 
 前半は降りしきる雨と、初戦の硬さからか両チームとも思うように攻撃を組み立てられなかった。新井もボランチの位置まで落ちてボールを受けて、ボールキープとパスでチームのリズムを作る動きに終始した。
 
 両チームともシュートを打てないまま前半を終えると、新井がチームメイトに吠えた。その時の様子を芦田徹監督は表情をほころばせながら、こう振り返った。
「引き上げて来た時、『もっと仕掛けようぜ、ゴールに向かって走ろうぜ』と味方に檄を飛ばしてくれた。僕が伝えたかったことを彼が言ってくれた」
 
 そして後半、それを自ら体現してみせた。55分、CB稲葉宏貴がセンターライン付近でボールを受けると、右サイドのスペースに飛び出したMF小林恭也の動きを見逃さず、浮き球のロングフィード。この瞬間、ボランチの位置まで落ちていた新井は、すぐさまゴールに向かって猛ダッシュを開始。小林はスピードを活かしてボールに追いつくと、中央へライナーのセンタリングを送り込む。そのボールの先にはトップスピードで走り込んだ新井の姿が。スピードを殺すことなく、そのまま右足ボレーでボールをジャストミートし、ゴールに突き刺した。
 
 エースの先制弾で勢いを掴んだ市立長野は、61分にも左CKを得ると、新井のキックを相手DFがクリアミス。これを稲葉がヘッドで押し込んで、追加点を挙げた。
 
 68分に鹿島学園のMF飯塚寿輝也に1点を返されるが、新井の全得点に絡む活躍で、市立長野が嬉しい全国初勝利を掴み取った。
 
「昨年のインターハイは大敗(初戦で瀬戸内に1-5)して悔しい思いをした分、今年は絶対に勝ちたかった。それにインターハイ予選準決勝、決勝でゴールを決められなかった分、全国で絶対に自分が決めて勝ちたかったんです」
 
 試合後、殊勲のエースは鋭い顔つきでこう口を開いたように、彼のゴールと勝利への飽くなき欲求が、ハーフタイムの仲間への檄につながっていた。

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「プロ入りが決まって、より自分が引っ張らないといけないと思ったのもあります。それに(プロ入りが)決まった以上、全国で『違い』を見せないといけないという気持ちも強かった」
 あの先制弾はまさに『違い』を見せつけるに十分の一撃だった。
 
「湘南の練習に参加させてもらったことで、より走ることの大切さを学びました。曺監督は球際や走ることに関して、ちょっとでも甘かったり、ちょっとでもサボったらすごく怒る。それが僕のためになっていて、ゴールのシーンも走り切ったからこそ奪えたと思います」
 
 湘南で鍛えられた走力と前への推進力。逆に言えば、「光は来る度に良くなっている」と曺監督が語っていたように、プロの指揮官の教えを忠実に実行し、かつ自分のものにしていったからこそ、自身を成長させ、湘南入団を勝ち取ったのだった。
 
「初戦でゴールを獲れたことはすごく嬉しいし、これでこれから先、少しリラックスしてプレーができる。次も獲りたいです」
 
 2回戦は30日、強豪の立正大淞南(島根)が相手だ。自身の成長を改めて実感したエースは、決意新たに強豪に挑もうとしている。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)