現地時間7月29日、ワースランド=ベベレンの森岡亮太が、ベルギーリーグでのデビューマッチとなったヘンク戦で、挨拶代わりのスーパーアシストを披露した。
 
 スコアレスで迎えた45分だった。バイタルエリア中央でパスを受けた森岡は、ボールを右サイドへ持ち出しながらゴール前へスルーパスを蹴り込む。これが、森岡にアプローチしたヘンクのボランチ2人の間と、最終ラインで守っていたDF2人の間を切り裂いて、右サイドから中へ走り込んできた味方にピタリと合った。
 
 絶妙なパスを受けたオリバー・ミニは、冷静にシュートをファーサイドへ流し込んだ。ベベレンは、森岡を起点に貴重な先制ゴールを奪ったのだ。
 
 これには、ベルギーテレビ局の実況も、「日本からやって来たニューカマーの森岡亮太が美しいスルーパス。賢いプレーから生まれたスルーパス。中に入って、完璧なタイミングでの良いパスが、相手の背後を突いた」と、褒めちぎった。
 
 試合後の森岡は、「自分の特徴が出たシーンだったかなと思います」とアシストシーンを振り返った。その“特徴”とは、ずばりラストパスだ。
 
「GKと1対1の局面を作るパスを、今日も何回か狙ってました。そこは常に狙っているシーンですね」
 
 ベベレンのスカウティングは、「ヘンクのCBとMFの間にはスペースがある」と分析しており、トップ下でプレーした森岡は中盤でフリーになって、巧みにゲームメークしていた。
 
 しかし、アシストシーンでは複数のマークを受けており、トドメのパスを出すには、スペースがない状況だった。それでも、森岡は、ボールを右に持ち出して、相手のMFとDFの間に“穴”を作って完璧なスルーパスを通してしまった。
 
 初めて森岡のプレーを見たベルギー人記者は、「当然、日本代表なんだろ!?」と聞きながら、ビックリした様子。しかし、7月21日に行なわれたプレシーズンマッチ、OHL(ベルギー2部)戦を見た記者にとっては、「あの試合でも森岡は、今日のような良いプレーを見せていた」と語り、この華麗なアシストも、予想通りのものだったようだ。
 
 試合は、ベベレンが2-0とリードした後、ホームのヘンクが一時逆転。後半アディショナルタイムにベベレンが追いつき、3-3で終わるというスリリングな展開で幕切れとなった。
 
 森岡も手応えを感じている様子で、ベルギーリーグへの印象を語っている。
 
「(ベルギーリーグは)ポーランドより楽しいです。ポーランドはガチャガチャするというか、ボールを持っても味方との良い関係性が築けないですし、『組織で』というより、『フィジカルで』という感じが強い。ベルギーはもうちょっと、みんなで繋ぐという意識があります。例えばワンツーとかでしっかりサポートするイメージを持ってくれているので楽しいです」
 また、ベルギーという国に対しても、遠征時に8時間バスで揺られたこともあったというポーランドとの違いを、森岡は語ってくれた。
 
「ベルギーって小さいじゃないですか。それがめっちゃ良いですね。例えば別の国に行くにしても、ドイツ、オランダ、それにフランスも近い。車でどこへでも行けるじゃないですか。ベベレンからブリュッセル、ヘントも30分〜40分の距離で、アントワープは15分。遠征も、今日はベルギーリーグの中では遠いほうじゃないですか? それでも当日移動で、1時間半で試合ができる。いやぁ、ベルギーは良いですねぇ」
 
 サッカーの面でも、生活の面でも、ベルギーに早くも馴染んだように思える森岡だが、こうした順応性も、ポーランドでの1年半で積んできた経験の賜物だろう。
 
「(ポーランドに来た当初は)言葉が喋れませんでした。ポーランドの人は日本人よりは英語を喋れるけど、ベルギー人よりは全然喋れない。そんな中で、僕は全然ゼロでしたから。日本の学校教育の英語じゃ、喋れないじゃないですか。全く聞き取れへんし、キツかったですね。気持ち的にも……」
 
 ヘンク戦の森岡は、監督の指示を聞き、それを味方に伝言していた。そして、デビューマッチで活躍したことで、試合後には多くのベルギー人記者たちに囲まれて、英語で取材を受けていた。それでも、ポーランドで修羅場を潜ったことによる余裕が、森岡の佇まいからは見て取れた。
 
 新天地でさっそく自らの力を見せつけた森岡。昨シーズン、ポーランドリーグで8ゴール・9アシストをマークした男は、新シーズンは10ゴール・10アシストという大台を目標に掲げている。
 
取材・文:中田 徹