[J2リーグ25節]熊本0−1名古屋/7月31日/えがおS
 
 25節の名古屋戦は、1点差で5試合ぶりの黒星。7月無敗とはならなかったものの、熊本の池谷友良監督が試合後、「チーム力は上がってきている」と述べた通り、3度の連敗で勝点を積み上げられなかったシーズン前期と比べて調子を取り戻してきた。

 リーグ全体の中で存在感を示すには至っていないが、その戦いぶりを見る限り、残りのゲームで浮上していく足がかりは掴みつつあると言っていいだろう。シーズン途中の監督交代という思い切った判断が、現時点で成果を発揮している。
 
 4年ぶりに現場に復帰した池谷監督が着手したのは、プレー精度や判断力の向上だ。就任会見で「『この辺』『あの辺』という表現ではなく、『ここ』『あそこ』というところまでこだわっていく」と話したように、それまでに見られたルーズさや曖昧さを排除し、ポジショニングやボールの奪い方、攻撃に移ってからの優先順位などを明確にしてチーム内で共有した。

 あわせて、本来は守備的MFの村上巧を最終ラインの真ん中に置く3バックにシステムを変更して守備を安定させ、それまで出場機会の少なかった選手たちにもチャンスを与えて積極的に起用した。
 
 就任直後の2試合は無得点での連敗となったが、天皇杯2回戦の水戸戦では延長戦を制して3回戦に駒を進め(3回戦は浦和に0−1で敗退)、リーグ戦折り返しの21節・東京V戦は4−0と今季最多得点で大勝。

 22節の水戸戦は終盤に逆転されながらアディショナルタイムに追いつく粘りを見せ、23節・千葉戦は狙い通りの攻守で1点差の完封勝ち。24節・群馬戦は先制を許したすぐあとにカウンターで追いつくなど、ゲーム展開に波はあれど「今はチームの組織、守備の組織の土台ができている」と園田拓也が言うように、悪い時間はしっかり耐えて、失点しても大崩れしないようになってきた。
 
 細部へのこだわりを求めることで、練習中も選手たちのコミュニケーションが増えている。疑問点や問題点があれば持ち越さず、その日のうちにピッチ上で解決しようとする姿勢が見られるようになったほか、味方のミスをカバーし合うといったチームスポーツ本来の連動性や献身性が、ゲーム中にも表現されている。
 選手たちがチーム状況を理解し、危機感を持ってトレーニングや試合に臨んでいるからこそだが、もう1点、池谷監督自身の変化も無関係ではない。
 
 2012年からクラブ社長を務めてきた指揮官は、経営者としてシビアに数字と向き合う経験を通じて組織マネジメントの手腕や感覚を磨き、またその間に間近で見てきた複数の監督たち——現長崎の高木琢也監督、吉田靖氏、FC今治育成副部長の小野剛氏、そして清川浩行前監督——の良い点を上手く取捨選択し、地域リーグやJFLを戦った当時よりも、監督としての幅を広げた。
 
 トレーニングでは、スカウティングをもとに次の対戦相手にフォーカスした要素も落とし込んでいるが、同時に全体のクオリティを高め底上げしていく部分にもウェイトが置かれている。
 
 とはいえ、まだ残留ラインとして設定する勝点42は遠く、良くなりつつあるなかでも特にラスト3分の1の工夫やコンビネーション、そして精度など課題は多い。
 
しかし、前半の悪い流れを修正して後半にペースを引き寄せた今回の名古屋戦のように、「こういうゲームができることを証明できた」(池谷監督)のは確か。7月の流れを維持して夏を制することができれば、残留争いから脱して混戦の中位にくい込んでいくことは十分可能だ。
 
取材・文:井芹貴志(フリーライター)