エースの1ゴールを固守した長崎総科大附が、16強の壁を打ち破った。7月31日に行なわれたインターハイ3回戦。長崎総科大附は東北の雄・尚志と激突し、辛くも1−0で勝利を収めた。虎の子の1点を決めたのは、U-19日本代表FW安藤瑞季である。

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「予想はしとったけど、だいぶ(ボールを)持たれてしもうたね」
 
 小嶺忠敏監督が苦笑いを浮かべたとおり、ボール支配率で上回っていたのは尚志だった。序盤からしっかりボールを動かして、人の動きに変化も入れて、長崎総科大附のマンツーマンディフェンスをかき回し続けた。思わず声の出るような見事な崩しもあったのだが、終わってみれば、スコアボードの数字は長崎総科大附の「1」に対して、尚志は「0」。尚志の仲村浩二監督が「シュート練習が足りないということ。そこの差が出てしまった」と嘆いたとおり、両者の差を生んだのは“ゴール前”にあった。
 
 長崎総科大附のチャンスは僅少で、シュートは試合を通じてわずかに6本だったが、前半23分、その少ない好機をしっかり活用してみせた。こぼれ球を拾っての攻勢で、FW西原先毅からのラストパスが安藤へと通る。日頃から「アイツとはやりやすい」と安藤も語っている盟友からのボールを受け取ると、目の前にはGKというシチュエーション。「DFが後ろから来ているのも分かっていた」という野性のFWは、ボールとともに軽やかにジャンプ。突っ込んできたGKを「抜ければ入るなと思った」と余裕をもってかわすと、あとは冷静に左足シュートを沈めるだけで良かった。
 
 劣勢のなかでも全員が身体を張ってゴール前を守り抜き、エースがチャンスで結果を残した。まさに「キチッと守るところを守って決めるところを決める。勝負の世界の基本」(小嶺監督)で上回った試合だったという見方も可能だろう。劣勢の試合展開をしきりに嘆いてみせていた熟練の名伯楽が「そこは評価してあげないといかん」と強調していたのは、何とも印象的だった。


 16強の壁に泣いてきた先輩たちを乗り越えたのは心理面でも大きい。安藤も「チームがちょっとずつ変わってきた」という手応えがあると話す。球際のこだわりなど、年代別日本代表の一員として海外勢と戦うなかで得たものを「チームに還元する」という意識で周囲に示してきた成果が出ているという確信だ。
 
 安藤自身にとっても強く願うJリーグ入りを実現させるための大事な機会だ。「プロに行きたいという気持ちは強いし、誰にも負けていないくらい。(全国大会という)アピールできる場があるので、しっかりやりたい」と力強く語った。準々決勝からの3戦で初タイトルを奪いつつ、さらに自身のプロ入りも勝ち取る。長崎の猛烈FWは明快な青写真を描いている。

取材・文:川端暁彦(フリーライター)