「どんな相手でも、守って凌ぐ試合をするつもりはない」
 
 富居徹雄監督がそう胸を張ったように、旭川実が日本一の経験を持つ静岡学園に攻め勝ち、同校の最高成績を塗り替えるベスト8進出を果たした。

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 結果だけを見れば番狂わせに見えるかもしれないが、試合内容は旭川実が勝つべくして勝った試合だった。序盤こそ、緩く入った守備の隙を突かれ、開始2分に先制点を許すも、すぐさま反撃を開始。ボランチのMF中里颯汰を起点にパスをつないで、攻撃のリズムを作ると、「彼らが仕事しないと始まらない」と富居監督が信頼を寄せるMF中田怜治とMF山内陸の両翼に配球し、ふたりの突破からチャンスを作った。
 
 最初のチャンスは、9分。中田が持ち味のスピードを活かした突破で右サイドを破ると、ゴール前に走り込んだFW西村歩夢が右足で合わせて、同点に追いつく。19分には山内が強引にペナルティエリア左へ進入した所を倒され、PKを獲得し、中里が冷静に決めて逆転に成功。後半も攻撃の勢いは衰えず、64分には中里を起点としたカウンターから右サイドを崩すと、最後は途中出場のFW金野修那が3点目をマーク。アディショナルタイムに1点を返されたが、最後まで攻撃的な姿勢を貫いた完勝と言えるゲームだった。
 
 ゴールラッシュは決して偶然ではない。「全国でも自分たちのサッカーが通用することが分かった」と中里が胸を張ったように、今大会はここまでの3試合で10得点を記録している。全国でも他を圧倒するほどの攻撃力は一朝一夕ではなく、4年前の2013年から準備をしてきたものだ。
 
 12年に、プレミアリーグに初参戦した旭川実は、残留も目指し、守備を重視した戦いを志向したが、1勝も奪えず。1年でのプリンス降格を余儀なくされた。「プレミアに戻りたい。プレミアで勝点を積み上げられるために、どうすれば良いかを考えた」。そんな想いを強くした富居監督が力を入れたのは、攻撃力の向上だった。
 
 元々、道内では攻撃に定評があるチームだったが、よりテクニックと判断にこだわり、練習の質を高めてきた。積雪が多い12月から3月は、積極的に道外へと出向き全国の強豪と試合を重ねた。

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 加えて、今季は1月から4月にかけて静岡などで行なわれる育成リーグの「ジャパンユーススーパーリーグ」にも参戦。前橋育英や富山一などと対戦したことで、「これまでは春までの試合数が少なく、選手の見極めができずにチーム作りが7月までかかっていた。でも、今年は早いうちから試合を重ねることができたので、チーム強化のスパンが早くなった」(富居監督)。

 強豪と試合を重ねた経験は、選手の自信にもつながっており、西村は「遠征で道外のチームでやる機会が多いし、今年はやれる力がある選手ばかりなので、相手が静岡学園でもビビらなかった」と胸を張る。
 
「一昨年にベスト16で負けていたので、『自分たちでチームの歴史を変えよう』と話してきた。大きな一歩を踏み出せて嬉しい」。そう喜びを口にした中里ら選手に気の緩みは見られない。準々決勝でも攻撃的なスタイルを誇示し、さらなる高みへ近づく予感が漂う。
 
取材・文:森田将義(フリーライター)