FC東京が新たに取り組む3-1-4-2システムは、下ろしたてのデニムパンツのように、まだまだ穿き慣れていないようだ。
 

 リーグ中断期間中にドイツ遠征(7月18日〜21日)を行なったチームは、マインツとアウグスブルクと対戦。その2試合でこの並びをテストし、26日の広島とのルヴァンカップ・プレーオフ第2戦(1-0で勝利)で公式戦初お披露目となった。続く、30日のJ1リーグ再開初戦の新潟戦も新システムを継続。1点を先制されたが、ピーター・ウタカの同点弾で追いつき1-1の引き分けに持ち込んだ。
 
 今季のFC東京は日本代表経験者を次々と補強し、そこに昨季得点王のP・ウタカも加わった。さらに、今夏には韓国代表DFのチャン・ヒョンスを獲得。クラブ史上最高のメンバーを揃えたはずだったが、成績は戦力の大きさに比例せず19節終了時で11位と中位に甘んじている。
 
 篠田善之監督が昨季途中の就任当初から掲げているテーマは「躍動感」だ。ハイライン・ハイプレスを信条に多くの勝点を積み重ねた。だが、今季は重心が低くなり、持ち前の積極的な守備が失われた試合が続いていた。その閉塞(へいそく)感を打破するために、監督就任から一貫して採用してきた4-2-3-1から3-1-4-2へのシステム変更に踏み切ったのである。
 
「前からより人数を掛けられるようにすることと、後ろからのビルドアップでうまくいっていなかったところを整理したかった。一番はアグレッシブにプレーしてほしい。まだどちらも出来上がっていないが、後ろが4枚と3枚の両方のシステムを持てればいい。まずは形にとらわれず、取り組んでほしい。(システムが変われば)約束事は変わってくるので、共通理解が攻守で必要になってくる」
 
 最前線の2トップがファーストディフェンダーとなってパスコースを限定し、そこから高い位置でボールを狩るのが変更した最大の目的。そこをかいくぐられた場合は両サイドが素早く帰陣し、最終ラインを5枚にして相手の攻撃を撥ね返す。高い位置で奪うことができれば、素早く2トップを起点にゴールへと迫る。
 
 ビルドアップは後ろの3枚とアンカーで相手の前線からの守備を剥がし、そこから前線に6方向あるパスコースの中から最適解を選択していく。相手の中央が厚ければ、外へと流し、そこからのクロスに残りの4人がゴール前へと飛び込んでいくのも、このシステムの利点だ。中断期間後の2試合で28本(広島戦15本、新潟戦13本)のシュートを放ち、躍動感を取り戻しつつあるのは、システム変更が生んだ良い面だろう。
 
 このシステム変更に対して、選手からもポジティブな声が上がった。
 
「守備ではボールにいけるようになった。ポゼッションもスムーズになったし、サイドチェンジも増えた。そこはこのシステムの良さ」(MF高萩洋次郎)
「攻撃に厚みを出せるのはいいところ。あれだけチャンスを作れているのでプラスに捉えたい。もし1点を失ったとしても、2点を返せるチームになる可能性を感じた」(GK林彰洋)
「4バックと違い、クロスに入っていける。中の枚数も増えるのでサイドがカギになる」(DF小川諒也)
「新システムは前からプレスにいける。両サイドが高くなったのでクロスが増えて多くのチャンスを作れた」(FWピーター・ウタカ)
 
 一方で、課題も山積している。
「カウンターを受けないようにすることも求められているが、まだボールをつながれたり、セカンドボールを拾われている。そこで遅らせたり、潰すということも意識していきたい」(高萩)
「前掛かりになりながらもリスクマネジメントをしっかりしないといけない。まだまだ安易なミスをしてしまっている」(林)
「相手にワンチャンスで決められて厳しい試合になった。得点力と決定力をつけていかないといけない」(小川)
「日頃からもっと前線にボールを供給してほしいと話している。もっとゴール付近で簡単に預けて近くでサポートしてほしい」(P・ウタカ)
 
 前線に人数を掛ける分、特に中盤の5枚の負担は大きく、簡単に中盤で奪われて数的不利な状況でカウンターを受けるケースも多い。シュートは多く放ったが、焦りからなのか落ち着きが足りず、バタバタ感は拭い切れていない。2試合とも1点止まりという攻撃は改善の必要がある。
 
 指揮官は「ここで足を止めてしまえば、何も変化がないと思うので、この戦い方を継続していきたい」と、前を向く。
 
 FC東京は、これまで監督が誰であろうと、伝統的に4バックのシステムを重用してきた。ここで、篠田監督は、その過去に一石を投じた。穿き続けたデニムパンツの青が色褪せていい味わいを出すように、今はこのシステムがしっくりくるまで根気強くやり続けていくことが求められている。
 
取材・文:馬場康平(フリーライター)