8月1日、全国高校総体(インターハイ)のサッカー競技は、男子が休養日で、女子の2回戦のみが開催された。サッカーダイジェストの取材班が向かった先は、七ヶ浜サッカースタジアム。海水浴場に隣接していて、吹き込んでくる浜風が心地よい。ただ曇り空のこの日は、涼しいを通り越して、少し肌寒く感じるほどだった。
 
 そんななか、第1試合の常盤木学園と星槎国際湘南の試合がはじまった。

【インターハイ女子PHOTO】星槎国際、日ノ本学園らが準決勝に進出!
 
 観衆はおよそ800人程度と、インターハイの女子会場としてはまずまずの入りだ。地元・宮城県の代表である常盤木が登場するのだから、当然と言えば当然か。普段は高校女子サッカーを見ないファンや関係者も少なくないように見えたが、キックオフ直後から、スタンドが何度かどよめいた。「なんだあの子は!?」「あの9番やばくない?」と、彼らの視線を釘付けにしたのが、星槎のU-19日本女子代表アタッカー、宮澤ひなただ。
 
 ファーストタッチの質がもう図抜けていて、ボールを持っただけで、なにかしでかすんじゃないかとワクワクさせられる。最終学年を迎え、元来のスピードにパワーとアジリティーを加味。右サイドで圧倒的な存在感を示していた。
 
 いきなり前半8分、先制点を挙げる。かわいい後輩でU-16日本女子代表の加藤ももがDFふたりを鮮やかに振り切って左サイドを打破し、中央へパス。走り込んでいた宮澤が難なく決めた。さらに4分後にも星槎は、見事なパスワークから加藤がゴールを挙げて2−0。楽勝ペースかと思われた。だが、名門・常盤木がそう簡単に白旗を上げるはずがない。
 
 キャプテンの宮澤は、その後の試合運びに甘さがあったと自戒する。
 
「難しい試合になるとは思ってましたが、2点決めてから自分たちのパスミスが少しずつ目立ってきて、相手に付け入る隙を与えてしまった。パスを繋ぎながら、穴を探して攻撃するのが星槎のスタイル。自分らでアイデアを出し合っていかなければ実現しないのに、途中からそれができていなかった。常盤木の執念を感じたし、攻撃も守備も連動性はまだまだです」
 
 後半になると、常盤木の鋭い出足と力強いカウンターが冴え渡り、劣勢に立たされる。後半4分、エースFWの沖野くれあにミドルを叩き込まれると、同27分にはMF崎山未来の直接FKを決まって同点。なんとかPK戦で激戦をモノにしたが、反省が残る試合内容だった。
 
 星槎にとっては全国大会で初のベスト4進出。やはり“エイトの壁”は高かったということだ。
 
「柄澤(俊介)監督にも、『ベスト4への壁は甘くないぞ』と言われていて、その通りだなと思いました。ただPK戦に入る前は、開き直ったじゃないですけど、笑って楽しもうって雰囲気になれた。だからリラックスして臨めましたね。これがウチのいいところです」


 中学時代はOSAレイアでプレー。このチームは星槎の下部組織と位置付けられ、現チームメイトの多くがその頃からの付き合いだ。高校入学後もすぐさまレギュラーの座を掴み、同時に、年代別の代表チームにも常時招集されるようになる。謙虚にひたむきに、宮澤は自身の能力を進化させてきた。
 
「自分の強みはスピードで、裏を取るプレーが得意。代表でもサイドを任されることが多いんですが、やはり国際試合で海外の選手と戦うと、いろいろと考えさせられます。スピードだけでは振り切れないし、単純に縦に仕掛けるだけでは通じない。突破する力を磨きつつ、やっぱり中へ入ってシュートを撃つであったり、スルーパスを送るであったりという幅がないと、相手にしてみれば怖くないと思う。監督にもずっと言われてますし、すごく意識している部分です」
 
 実際、常盤木の最終ラインは最後まで宮澤の神出鬼没な動きを封じ込めなかった。トップスピードに乗るかと思えば切り返し、カットインしてチャンスを導く。別の場面では、トップ下の位置に居座り、突如としてサイドに流れて後方の選手に走る込むスペースを提供するなど、なんともプレーのレパートリーが多彩だ。戦況を見定める眼も確かである。
 
 左サイドに陣取り、右の宮澤と強力な両翼を構成する2年生の加藤は、「ひなたさんはもうスゴすぎて付いていくのがやっと。本当にいろんなアイデアがあって、いつも引っ張ってくれる。ピッチの中でも外でもです」と、感謝しきりだ。
 
 近未来のなでしこジャパン候補もまた、チームメイトへの謝意を忘れない。
 
「1年生の頃から代表に呼んでもらうことが多くて、チームの練習に参加できない日がけっこうありました。今年もキャプテンなのに不在になることが少なくない。でもいつでも、仲間であったりたくさんの方に助けられてここまで来た。感謝してもし切れないほどです。だからその恩返しのためにも、この大会では大きな結果を残したいんです」
 
 サッカーセンスの塊だ。となると期待したくなるのが、3年後の東京五輪でのメンバー入り。これまで世代別代表でつねに飛び級招集され、その都度、年長者を向こうに回してアピールを続けてきた。卒業後の進路はまだ決まっていないが、メダル奪取を狙うなでしこジャパンの秘密兵器となる可能性は、決して低くない。恩師である柄澤監督も、「本当に意識が高くて、自分を活かせてると思う。プレーの幅が広がりましたからね」と目を細める。
 
 さて、次なる準決勝(8月3日)の相手は、ディフェンディングチャンピオンの藤枝順心だ。主将の意気込みを聞こう。
 
「お互いのことをよく分かっている者同士の戦い。気持ちの勝負になると思います」
 
 ずっとスマイリーに話していた17歳の表情が、キュッと引き締まったのを、46歳のオヤジ記者は見逃さなかった。
 
取材・文:川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)