仙台の渡邉晋監督による現役指揮官コラム「日晋月歩」の第18回。テーマは「戦い方の幅」だ。今季から3-4-2-1に布陣を変更し、ボールポゼッションをしながら意図的に相手守備網を崩す攻撃を志向してきた。
 
 ただ、アタックにフォーカスしたことで「カウンターを食らって失点」というシーンが増加したのも事実。そのジレンマをどうやって解消していくのか。柏戦でのパフォーマンスを含めて、話してもらった。
 
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[J1リーグ19節]仙台 1-1 柏/7月30日(日)/ユアスタ
 
 中断期間は「戦い方の幅を広げる」ことに取り組んできた。理想を追求するだけではなく、勝つために引き出しを増やす。柏戦はトレーニングの成果を試すいい機会であり、締まったゲームになったと思っている。
 
 今季リーグ戦の前半は徹底的に「攻撃」にフォーカスし、それもあって意図的な崩しを上位陣相手にもできるようにはなった。一方でカウンターを食らう、そして失点が増えるというジレンマもあった。
 
 内容的には良くなってきていても、結果的には16節のC大阪戦(2-4)、17節のG大阪戦(2-3)、18節の神戸戦(0-3)と3連敗。考えていたほど勝点を積み上げられておらず、柔軟性の大切さを感じていたところだった。
 
 後半戦に向けて勝利を手にするためにはどうすればいいのか? 自分たちのやりたいことができない時の「次の一手」は? その具体策を落とし込んだ結果として、引いて守るのもひとつの手となったわけだ。
 
 中断期間中、サッカー関係者と食事に行く機会があった。いろいろな話をしたのだが、例えば「世界を相手にした際の日本はまだまだ柔軟性が足りない」という話題が挙がった。いつも「自分たちのサッカー」に固執して、強豪に粉砕されてしまう。
 
 ちょうど自分が考えていたことにピタリとハマった気がした。加えて、撮り溜めていたコンフェデレーションズ・カップの映像を見直したのも、ひとつの後押しだったように思う。
 
 その時のドイツも3バックを敷いていた。ゲームによっては5-4-1のブロックを組んで、引いて守る。世界王者がだ。勝つために割り切ること、戦い方を使い分けること。それが大事なのだと改めて感じ、選手にも「仙台のやり方を変えるわけじゃない」と話したうえで説明をした。
 攻撃に重きを置いてきたことで、その針が一気に逆方向に触れる不安はあった。だからこそ、中断期間で徹底的にミーティングを行ない、トレーニングも重ねた。そして、7月22日のプレシーズンマッチ・神戸戦での選手の振る舞いや戦いぶりを見て、それもいくらかは解消したように思う。
 
 実は神戸戦ではミーティングをほとんど行なわずに試合に入った。ゲーム中も、ハーフタイムもほとんど指示を出さず、「この試合に勝つためにどうすべきか」を選手たちに委ねた部分がたくさんあった。
 
 今までのようにボールを握るのか、それともしっかりとブロックを敷いてカウンターを狙うのか。90分間、どのようにゲームをコントロールするのか。押し込める時間帯も十分にあったし、最終的に追い付けたのも(2-2)、自分たちで考えに考えたからだと思う。
 
 引いて守る場面も少なくなかったが、ボール保持率自体はこれまでとそこまで遜色はなかったし、そういう姿を見て、新たなチェレンジにも取り組めるのではという手応えを感じた。
 
 柏戦の前半は重心が後ろに掛かっていたが、「それによってどういう展開になるのか」をきちんと理解していて、「その後に得点をどう奪いに行けばいいか」というのも彼らなりに答を持っていたように感じる。
 
 今までであれば、先に失点して、あのまま0-1で押し切られてしまっていたかもしれない。同点に追い付いてゲームを終われたのは、今まで積み上げたものが新しいチャレンジをしても崩れなかったからだ。
 
 もちろんパーフェクトではない。しかし、それは同時に「まだまだやれる」ということ。そのなかで「仙台はこんな戦い方もできる」というひとつの可能性は示せたと思っている。
 
構成●古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
 
※渡邉監督の特別コラムは、J1リーグの毎試合後にお届けします。次回は8月5日に行なわれる20節・鹿島戦の予定。お楽しみに!