2年ぶり5回目のインターハイ制覇に邁進する日ノ本学園。1回戦は日本航空を3−0で下し、火曜日の2回戦では、台頭著しい前橋育英の挑戦を1−0で退けた。堂々のベスト4進出。高校女子サッカー界、西の横綱の地位は揺るがない。

【インターハイ女子PHOTO】星槎国際、日ノ本学園らが準決勝に進出! 
 
 3年前、全国からタレントが集結する姫路の精鋭軍団に、熊本からふたりの有望株が加わった。ひとりは右SBを主戦場に2年時から主軸として活躍し、今季は中盤で守備を引き締める主将・牛島理子(うしじま・りこ)。もうひとりはエースナンバー10番を背負い、圧倒的な技巧とセンスでゴールを量産する宮本華乃(みやもと・かの)だ。最終学年を迎えた攻守の軸が、日ノ本サッカーをぐいぐい牽引している。
 
 小学3年から9年間、苦楽をともにしてきた。異色だったのは中学時代だ。ふたりはロアッソ熊本のジュニアユースチームを挑戦の場に選んだ。女子チームではない。普通に男子中学生が所属するチームに、特別に女子選手として迎えられたのだ。
 
 U-19日本女子代表の牛島は、こう説明してくれた。
 
「もともと男子のチームなんですが、初めて女子選手も受け入れてくれたんです。最初はわたしたちだけだったのが、最終的には下にもふたり入ってきましたね。練習メニューはまったく男子と同じ。つねに男子の中でプレーして、試合も対戦相手は男子。ほかの女子選手と違う経験だったのは確かです(笑)」
 
 牛島が行くならと、宮本も未知の世界に飛び込んだ。
 
「地元の女子の中学校があまり強くなかったんです。ならば思い切って新しいところでプレーしてみよう、チャレンジしてみようと思いました。いま振り返ってみても、行ってよかったなと思ってます」
 
 男子のチームに女子選手が入れば、どんなメリットがあるのか。中学生ともなればかなりの体格差があるわけで、スピードとパワーも段違い。だが、ふたりは口を揃える。だからこそ「普通では伸ばせないところを伸ばせた」のだと。
 
 当時から攻撃のマルチプレーヤーだった宮本は、「だんだん男子のスピードやパワーに叶わなくなりましたけど、じゃあどうしたらいいのかと、いろいろ考えるようになった。相手を背負わないでどう裏へ抜けるかとか、こぼれ球を確実に拾って決めるとか、そうした場面での集中力と精度が間違いなく高まりました」と回顧する。一方の牛島は、「男子のスピード感が当たり前だったんで、あれを経験できたのはすごく大きかったです。当たったら絶対に勝てない。そこで磨けたもののひとつがポジショニング。いつも考えてましたから」と話してくれた。
 
 公式戦にはほぼ出場できなかったが、練習試合では頻繁に起用してもらえたという。


 
 やがてふたりは中学を卒業し、高校女子サッカー界のトップに君臨する日ノ本の門を叩く。田邊友恵監督は「やはり男子に揉まれてたから、その時点でよく走れる子たちでした。球際にしてもタフで、そうしたところはやはり違いましたよ」と、入学当初の印象を振り返ってくれた。
 
 2度に渡る大きな環境の変化を経て、彼女たちはいよいよ集大成のラストイヤーを迎えた。一緒に同じチームでサッカーをするのは、今年が最後だ。
 
「ずっと励まし合ってきたんで、親友以上の存在です。全国のタイトルを一緒に獲りたいです」(牛島)
「すごくしっかりしていて、いつもそばにいてくれた。最高の1年にしたいですし、このインターハイも優勝を狙います」(宮本)
 
 昨年度の日ノ本は、5年ぶりの無冠に終わった。常勝軍団が復権を果たすためには、牛島&宮本を筆頭とする歴戦の選手たちの奮闘が欠かせない。主将は「今年はまとまりがあって、チーム状態もかなり良くなってきている。うまく導いていきたい」と決意を語った。
 
 8月3日の準決勝では、強豪・作陽と雌雄を決する。熊本が生んだ俊英コンビの“最後の夏”は、これからが本番だ。
 
取材・文:川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)