よもやのミラクルショットが、流経大柏をベスト4へと導いた。
 
 全国高校総体(インターハイ)の準々決勝、流経大柏vs長崎総科大附の一戦。立ち上がりから激しい潰しあいとなった攻防戦は、1−1のまま終盤に突入していた。そして後半29分、流経大柏に逆転ゴールが生まれる。

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 MF近藤潤が右サイドに流れるMF熊澤和希へパス。相手DFを軽くかわした長身アタッカーは、右45度、ゴールまで25メートルの位置から右足を強振する。誰もが驚くタイミングでの強引な一撃だった。
 
 それが、センタリングに備えて前傾姿勢だった敵GK湊大昴の完全に逆を衝く。それまで堅守を披露していた守護神が慌てて戻るも一歩及ばず。拮抗したスリリングな局面で、ファインゴールが飛び出した。
 
「ゴールがしっかり見えていたんで、思いっきり撃ってやろうと思った。キーパーが出ていたのも分かっていたし、絶対に入るぞと。遠いかもとは思いませんでしたね。あんましああいうのを決めるイメージではないですけど」
 
 そう言って、熊澤は控え気味に笑った。
 
 入学時から、期待値の高かった2年生アタッカーだ。トップ下を主戦場に攻撃的な位置ならどこでもこなし、高度な技巧と非凡な創造性でゴールに絡んでくる。昨夏にはU-16日本代表にも選出されるなど、着実に成長を遂げてきた。
 
 だが今季、レギュラー定着が有力視されながらも、選手層の厚いチームにあってなかなか突き抜けられなかった。今大会も初戦がベンチスタートで、3回戦が先発フル出場、そして準々決勝が控えと目まぐるしい。鬱積した想いを、あの一撃に凝縮させたのだ。
 
「安定感のあるプレーが僕のひとつの持ち味です。でもそれではアピールにつながらないし、スタメンを完全に獲ることはできない。出たら結果にこだわろうと思ってました。一度スタメンを掴んだら、選手権まで手放さないつもりでやります」


 この日は後半21分からの出場だった。
 
 0−1のまま突破口を見いだせなかった流経大柏だったが、システムを4−4−2から4−2−3−1に変え、熊澤をトップ下に配置。与えられたタスクは「絶対に流れを変えろ、1・5列目でフォワードが競った球を確実に収めて攻撃を厚くしろ」だった。これがものの見事に奏功し、長崎総科大附のディフェンスラインをぐいぐい押し下げていく。司令塔の菊地泰智は「先制されてからまったくいいところがなかったんですけど、熊澤が入ってきてからボールが落ち着くようになった。変えましたね、流れを」と称えた。
 
 1年生で臨んだ昨年大会は準優勝に終わった。熊澤は決勝・市立船橋戦の終了間際にパワープレー要員としてピッチに送り込まれたが、さしたる仕事もできずにタイムアップの笛を聞いた。
 
「なんにもできないまま終わってしまった。悔しかったし、ずっと借りを返したいと思っていた。去年も今年も3年生が主体ですけど、僕や関川(郁万)はもう頼りっぱなしじゃいけない。どんどん前に出て引っ張っていきたいと思います」
 
 9年ぶりの日本一へ、ラッキーボーイとなれるか。準決勝・前橋育英戦でも、熊澤和希のパフォーマンスに注目だ。
 
取材・文:川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)