今度は、オレの番だ。連覇を目指すチームの最前線に、ゴールを渇望している男がいる。
 
 インターハイは2日に準々決勝を行ない、連覇を目指す市立船橋が、2−1で関東一を下して準決勝進出を決めた。
 
 2点を決めたのは、エースの福元友哉だ。ただし、福元は通算2度目となる警告を受けたため、準決勝は出場停止となる。決勝の舞台へ勝ち上がるためには、福元以外のアタッカー陣の奮起が望まれる。
 
 3トップのうち、福元は全3試合で4得点。右の有田朱里は準々決勝では途中から右DFで起用されたが、2回戦と3回戦でゴールを挙げた。「前の(ポジションの)選手としては、やっぱり欲しいです」と飢えているのが、唯一無得点に終わっている左の松尾勇佑だ。
 
 スピード自慢の松尾は、関東一戦で2点目をアシスト。左サイドを快足で駆け上がり、低く鋭いクロスを福元に合わせた。松尾は「3試合を戦って、まだ無得点。朝岡(隆蔵)監督にも試合前に『点を決めてないのは、お前だけだぞ』と言われて、決めてやろうと思っていたんですけど……。まあ、今までは何もできなかったので、今日は一応、アシストをできたのは良かったです。でも、もっと、どん欲にやっていきたいです」と一定の手応えを得た。
 
 持ち味のスピードは、中学生の頃から高く評価されていた。進路決定に関するエピソードが、素質の高さを物語る。
 
 当時、松尾が所属していたジェファFCは、琉球FCの李済華GMが代表を務め、國學院久我山(東京)の清水恭孝監督が総監督を務めるクラブだ。当然のように、松尾は國學院久我山を第一志望としていた。ただ、相当な学力も必要となることから難度が高く、別の進路も候補に入れようとした時、李GMが「久我山に行かないなら、うちのクラブに連れて行きたい」とJ3に所属する琉球行きを提案した。
 
 琉球FCの育成組織にはU-15とスクールがあるが、U-18カテゴリーは存在しない。将来を考えて進学することになり、進路は市立船橋に決まったが、中卒Jリーガーになる可能性が一時的に浮上していたのだ。

【インターハイPHOTO】流経大柏、市立船橋ら関東勢4校がベスト4進出!


 ただし、素質だけでは、厳しい世界は生き残れない。高校入学時から市立船橋でも期待を受けているが、定位置を確保したのは今季になってからだ。
 
 朝岡監督は「彼は、もっとできると思います。スピードも含めて、フィジカル的な能力は持っている。でも、やっと本気になってきたかなというところ。人の目をうかがっているところがある。まだ、自分でチャンスを掴んだ選手ではなく、能力に期待してチャンスを与えている選手。もっと、自分の将来を真剣に考えて、自分の力でチャンスを掴みとってほしい。今年一年が勝負でしょう」とプロの世界でも自力で生き残れる選手への成長を期待している。
 
 福元が累積警告で出場停止となる準決勝は、3トップの一角を任される責任をプレーで表現する絶好のチャンスになる。
 
「高校では、スピードだけでは通用しないところもあるし、判断が遅くてボールを取られてしまうこともある。もっとプレースピードの早いゲームのなかで、自分の特徴を出せるようにしたいと思います。緩急を付けることなども助言は受けています。リーグ戦でも起用してもらっているけど、ここぞという時に決めていない。まだまだかなと思います。決めて行かないとチャンスがなくなってしまう。明日、チャンスを掴みたいと思います」
 
 意気込みをそう語った松尾の目指す将来像は、スピードを武器にゴールを量産するレスターの点取り屋ジェイミー・バーディ。速いというだけの評価で終わっては、夢には近付けない。エース不在の準決勝で、点を取れるスピードスターへの変身を遂げる。
 
取材・文:平野貴也(スポーツライター)