チームも自身も昇り調子で来ていただけに、逆転負けに悔しさを滲ませた。長崎総科大附のエースFW、安藤瑞季。最後のインターハイは、ベスト8で終わりを告げた。
 
 準々決勝の流経大柏戦、キックオフ直後から鬼気迫る勢いで敵陣に踏み出した。「絶対に負けたくなかった」と意気込んだのが、相手の2年生CB関川郁万とのマッチアップ。高さでは勝てない安藤は、コンタクト前に手や臀部を巧みに使って関川を抑え、ほとんどのクサビの球を胸から下で処理した。後半17分、唯一あったフェイス・トゥ・フェイスの局面では、抜き去られた関川が堪らずファウル。警告を受けた。安藤がつねに、主導権を握った。

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 拮抗したゲームは0−0のまま後半に突入し、後半14分、長崎総科大附は願ってもない先制点を挙げる。決めたのは安藤だ。DF岩本蓮太のロングスローを敵DFがかぶり、中央で待ち構えたエースが難なく蹴り込んだ。だが、その後にチームはPKを与えて同点とされ、終了6分前にはGKのポジショニングミスを突かれてさらに被弾。痛恨の逆転負けを喫したのである。
 
 冬の選手権・2回戦で敗退した直後は「先輩たちに申し訳ない」と号泣していた安藤だが、この日は淡々と冷静にゲームを振り返った。
 
「涙は出ませんでした。先制できて、これは行けるぞと自分としては思っていたんですけど……。そこから2点を取られたわけですからね。エイト(ベスト8)で終わったのは悔しいし、ここで負けるチームではないと思う。だから、やり切った感がない」
 
 1回戦の徳島市立戦(3−0)はノーゴールに終わるも2アシストをマーク。続く2回戦の東海大仰星戦(4−1)で1ゴール、3回戦の尚志戦(1−0)では決勝点を叩き出した。そしてこの日も貴重な先制点を挙げ、最低限のエースの責務は果たしたが、チームに栄冠をもたらすことはできなかった。
 
「個人的には、この大会に入ってから今日の試合のプレーがいちばん良かった。負けたくないって気持ちが強かったからだし、それだけにやるせない気持ちがある。フォワードが、僕が、もっと点を決めていれば勝てたわけですから」
 

 今大会の長崎県予選は、準決勝からの参戦だった。U-19日本代表の海外遠征があったからで、今季は春先から年代別代表とチームを絶えず行き来する多忙な日々を送ってきた。疲労はピークに達していたはずだが、「言い訳にはならない。休みなんて基本ないんですよ」と気丈に語り、チームの勝利のために邁進してきた。鋼のメンタリティーを持つ男だ。
 
「チームとしても個人としても全国で戦って課題は見つかったと思う。強いチームはこういうとこで負けない。なんだかんだで必ず勝ち上がって、残っていくんだとよく分かった。チームがさらに成長するためにはこの夏が山場と思うので、しっかり取り組みたい。プリンスリーグ(九州)で結果を出して、選手権につなげる。優勝を目ざして。絶対に獲りたいです」
 
 安藤自身も大きな目標を定めている。高卒でのプロ入りだ。そのための課題克服にも、真摯に取り組むという。
 
「プロになりたいって気持ちは強い。だからそのためになにが必要なのかをよく考えて、日々の練習に取り組みます。自分は足下で受けるより、裏に抜けて受けるほうが得意なんですけど、そうしたマイナスをプラスに持っていけるようにしなければ先はないと思う。フォワードはボールを失わないことがなにより大事ですから。自分次第で、変われると思ってます」
 
 力強くそう語り、前方を見据えた安藤瑞季。集大成の選手権でその熱き魂を昇華させるべく、図抜けたゴールセンスにさらなる磨きをかける。
 
取材・文:川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)