流経大柏を2年連続のインターハイ決勝へ導いたのは、破天荒な2年生CBだった。
 
 前半20分、左CK。左SB近藤立都が鋭い弾道で送ったクロスボールにドンピシャヘッドで応えたのが、関川郁万だ。あまりの迫力に圧倒されたのか、マーカーはひとりもおらず、超が付くほどの高い打点で叩きつけた。ひとめぼれスタジアム宮城の観衆が感嘆の声を上げたのも無理はない。流経大柏の名将・本田裕一郎監督でさえ「なかなか見れないよね」と語り、興奮を隠せない衝撃弾だった。

【インターハイ男子準決勝PHOTO】流経大柏が1−0で前橋育英を下して決勝へ!
 
 2回戦の市立長野戦でハットトリックを達成し、これで大会4点目。満面の笑みでミックスゾーンに現われた。
 
「キッカーのリュウト(近藤)くんとしっかり仕込めてたんで、もう当てるだけでした。監督にも『あんなの久々に見たよ』と言ってもらえたし、結果的に決勝点になったんで嬉しいです」
 
 前橋育英の破壊的なアタッカー陣をどう封じ込めるか。流経大柏にとって、これが最大の難問だった。プリンスリーグ関東・第3節の対戦では0−3の完敗。綿密なプランを練った本田監督は、相手の4−4−2に対して、5−4−1に近い守備的なシステムを採用した。2トップをマンマークさせ、怒涛のフォアチェックをベースに肉弾戦へと持ち込んだのだ。関川がマークしたのは、ここまで5得点と絶好調の“4番”榎本樹だった。
 
「試合前の時点で得点王ですからね。怖さがあったんですが、ツートップをそれぞれが見るということだったんで集中できた。昨日もマンマークで安藤(瑞季)さんに付いたけど、本当にフィジカルがすごくて、足も速く、手強かったです。なによりマークを外して得点されたんで悔しかった。2日続けてやられるわけにはいかない。だから今日はプライドに懸けて絶対に抑えてやろうと思ってました。最初のスローインをしっかり頭で弾き返せたんで、気持ち的にノッていけましたね」
 
 終盤には、前橋育英が誇る最強のターゲットマン、宮崎鴻が登場。185センチ・80キロの偉丈夫に対しては、なかなか間合いが掴めなかったという。
 
「僕はプリンスに出てなかったんで、初めて戦いました。チームの後藤(大輝)くんとかも強いけど、またまったく違う強さ。どっしりしてて、競る前に身体を当ててきたり、駆け引きも上手いんです。でも、最後の最後だけ勝てた。ああいう相手に勝てたのは自信になります。試合中、エノ(榎下雅大コーチ)さんに“逃げ道”を教えてもらったら上手くいったんですよ。中身? またプリンスでやるかもなんで、内緒です(笑)」
 

 2年連続のファイナル進出だ。昨年果たせなかった優勝を狙うとともに、得点王への欲もちらつく。本田監督は報道陣の前で、「センターバックで得点王ってなかなかいないでしょ? 狙っていけばいいじゃないかって本人に言ったら、まんざらでもない顔をしてましたよ」と微笑んだ。「狙っていい」と、お墨付きをもらった。
 
「じゃあ決勝では1点狙います。え? それじゃ単独になれない? 分かった。じゃあハットトリックっすね。敵の攻撃をゼロに抑えて、そんなことを考えられるくらい、余裕のある試合運びをしたいです」
 
 元来、キレやすい性格だが、榎本コーチに「もっと自分でコントロールしてみろ」と指摘され、この半年は自問自答を続けてきた。イージーミスが減り、ビルドアップでの貢献度や得点力の向上など、単なるハードチャージ頼みだった印象はもはやない。
 
 流経大柏が誇るディフェンスの要、関川郁万。守備で観衆を魅了する、生粋のエンターテナーだ。
 
 明日8月4日、全国制覇と得点王の二兎を追う。
 
取材・文:川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)