思わぬ大差がついた。
 
 インターハイ女子準決勝、前回女王・藤枝順心は関東女王・星槎国際湘南の挑戦を受け、5−0と一蹴した。緻密なスカウティングが奏功し、徹底したフォアチェックで星槎自慢のパスワークを分断。奪っては手数を掛けない高質な速攻でみるみるリードを広げた。7回の得点機で5ゴールとは、驚異的な決定力だ。

【インターハイ女子準決勝PHOTO】藤枝順心5-0星槎国際|藤枝順心が決勝進出!
 
 攻守両面で抜群の連動性と機動性を誇る順心。その中軸を担うのが、昨年のU-17日本女子代表MF、千葉玲海菜(れみな)だ。本来はパワフルなドリブルを武器に敵陣を切り裂くアタッカーだが、今季はチーム事情でボランチを担当。これがものの見事にハマった。
 
 チームを率いる名将、多々良和之監督はこう評する。
 
「攻守に渡って効いてますね。1年の頃から試合に出てますし、代表にも行ってさらに自信が付いた。キャプテンに相応しい活躍を見せてくれています」
 
 ビルドアップはほぼすべて、中盤の底に陣取るこの「10番」を経由する。守→攻の切り替えでは的確な散らしのパスでリズムを作り、機を見たロングドリブルで相手陣内に踏み込む。一方で攻→守の切り替え時には、敵の攻撃を遅らせる動きやファウルも厭わない激しいチェックを披露。以前にはなかったレパートリーを加えている。

 言わば、スーパーマルチなMFに進化した。とはいえ、やはり千葉の真骨頂は攻撃性能だろう。前半24分、チームの3点目。敵のペナルティーアーク付近でボールを受けた千葉は、スラロームのようなドリブルを敢行する。マーカーふたりを手玉に取り、最後はGKの股を抜いてゴールを挙げた。スタンドがドッと沸いた瞬間だ。
 
 狙い通りのゴールだったのか?
 
「今年はあまりあそこまで行かないんですけど、ついつい行っちゃいました(笑)。深く持ち込んだけどパスコースが切られてて、パスをすると見せかけたら股が空いたんで、上手く狙えました。自分の特徴は攻撃。ああやって仕掛けていった時、周りがしっかり底のスペースを埋めてくれる。じゃないとあそこまで上がれません」

 主将で、10番で、司令塔。昨年は福田ゆい(現・INAC神戸レオネッサ)が担った“三役”だ。
 
「ゆいさんは本当に巧くて、パスを散らせるタイプだったけど、自分はまた違う。去年のチームもそうだったんですけど、順心には代々巧い選手がいる。でもわたしたちは違う。だからこそ球際であったり、走り負けないであったり、そういうところで頑張るしかない。どんどん前から仕掛けていくスタイル。すごく意識して、習慣づけて練習してます」
 
 昨年の秋には、今回対戦した星槎のMF宮澤ひなたらとU-17女子ワールドカップに出場し、堂々の準優勝。主にスーパーサブの役割を担い、準決勝のスペイン戦では先発に名を連ねた。栄光のメンバーの一員だ。
 
「世界大会ではそれなりに出れましたが、代表ではわたしはいつも下手なほうだった。世界で戦うなかで、誰よりも走ったり、相手の嫌なところでボールを受けて止めたり、というところを学んだ。順心に戻ってきてからもそこをすごく意識してきましたし、チームのみんなにも伝えてきました」
 
 充実の表情を浮かべ、最終学年のシーズンを戦う千葉。夏の連覇まで、あと1勝だ。
 
「大会前はプレッシャーも感じましたけど、試合が始まったら一戦一戦をやり抜くところでチームがまとまって、落ち着いてやれている。明日はしっかり勝って、わたしたちも頂点に立ちたい」
 
 日ノ本学園と戦う、運命のファイナル。絶好調のスーパーMF、千葉玲海菜の妙技と舵取りに着目したい。
 
取材・文:川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)