[日本クラブユース選手権(U-18)・決勝]浦和ユース 0-2 FC東京U-18/8月2日(水)/味フィ西
 
「大好きなチームメイト、スタッフ、サポーターと一緒に日本一を取れたのは嬉しいのひと言」
 
 浦和ユースとの決勝戦では1得点・1アシストを記録。結果を残し、大会MVPも獲得した小林幹は第一声でそう言った。記者にミックスゾーンで優勝が決まった瞬間の気持ちを問われた際のことだ。
 
 クラブ史上初となる大会連覇の立役者は、悔しさや葛藤とともにこの1年を歩んできた。昨年の優勝の瞬間はスタンドから見守っている。もちろん、戴冠を喜びはした。しかし、同時に「俺はなぜピッチにいないのだろう」という悔しさもこみ上げてきた。
 
 そんななか、新シーズンが始まると背番号10を志願した。日本トップの強豪・FC東京U-18で、特別な番号を背負うことの意味……。殻を破りたい想いもあったのだろう。重圧に潰されそうな時期もあった。
 
「自分から『付けたい』と主張しましたが、重みや責任はかなりのものでした。『他の選手が着たほうがいいのでは』という気持ちも生まれました。
 
『この番号を付けている限りは変なプレーはできない』『どんな試合でもしっかりとしたパフォーマンスを披露しなければ』という想いで戦っています」
 
 迎えた今大会、小林にはある変化が起こっていた。それは「チームのためにプレーする」姿勢がより強くなったこと。「ただただ、このチームで優勝したかった。その気持ちは勝ち進むたびにどんどん膨らんでいって、いつも以上に声を出せていたと思います」
 
 自分のユニホームに「10」という数字が付いている以上、周囲に認められるようなプレーをするのは当たり前。個人として結果を示すのは当然のこと。そのうえで引っ張っていくようなアクションを起こさなければならない。
 
「声を掛けるだけでプレーは変わってくる。声を出すのは誰にでもできることですし、勝つためですから」。1年前の“ピッチに立っていなかった自分”に対する後悔は、加速度的に小林を成長させていた。
 浦和ユースとの決勝戦は厳しいゲームだった。高いインテンシティと集中力を保ち、全員が運動量豊富で、激しく寄せ、身体を投げ出すのを厭わない相手にスコアを動かせない。前半のチームのシュート本数は9。
 
 37分にGK河畑の好判断のよって防がれた決定機。続く38分に強烈なショットをゴール左へと逸らしたものを含めて、小林も3本を放っている。
 
「守備陣がすごく頑張ってくれていて、攻撃もいい形を作れていました。あとは自分が決めるだけだったのに、そこが入らなくて……。前半が終わった時に申し訳ない気持ちがこみ上げてきました」
 
 0-0で折り返すと、浦和ユースが息を吹き返し、徐々に守る時間帯が多くなっていった。それに比例してピンチも増加。もはや「FC東京U-18がいつかゴールするだろう」という雰囲気は霧散しており、「どっちが先制してもおかしくない」状態となっていた。
 
 77分には自陣ペナルティエリア手前、ほぼ正面でFKを取られる危険なシーンも。それでも、苦境を撥ね返して得点を決めたのはFC東京U-18だった。79分、耳目を集める久保建英が角度のない位置から左足で決めた。お膳立てしたのが、小林だった。
 
 浦和守備陣が作る三角形に入ってボールを受けると、突っ掛けて内へと切り返す。ほぼコースを塞がれてはいたものの、シュートレンジ。マークを集中させて、走り込んできた久保へと絶妙なタイミングでノールックパスを出した。
 
「シュートをしようか、他のプレーを選択しようか。ちょっと迷っているなかで、後ろから久保選手が『ヘイ!』と呼んでくれた。位置はあまり確認できていませんでしたが、だいたいここにいるだろうなというのは分かっていました。
 
 ノールック気味でしたけど、久保選手とは普段のトレーニングから感覚を共有できている部分が多いですからね。パスを出したら、『得点を奪ってくれるだろう』という期待に応えて、素晴らしいゴールを決めてくれた。僕に1アシストを付けてくれて感謝しています」
 
 小林は謙虚に、照れ臭そうに笑った。
 時計の針は83分を指していた。静寂がスタジアムを包み込む。ペナルティスポットに置かれたボールを挟んで、小林と相手GKの河畑光が対峙していた。
 
 このPKを決めることは、トドメとほぼ同義。逆に止められでもしたら、後半から攻勢に出ていた浦和ユースの反撃の炎に油を注ぎかねない。天国か、地獄か。確実に決勝戦のターニングポイントのひとつだった。
 
 その場面で、小林がキッカーとして立っていた理由は簡単だった。「自分のクロスがハンドを誘ったので蹴る権利があるかな、と」。ボールが近くにあり、拾ってそのまま向かった。この時、「変なことを特に何も考えずにいられた」という。本人の言葉を続けよう。
 
「ボールをセットした時には『右に蹴ろう』と。ゴール裏を見れば、たくさんのサポーターがいる。なので、自分の考えていた方向へ思い切り蹴れば入るんじゃないかなと。いろんな人の想いを乗せて打ったシュートですから」
 
 チョン、チョンと左にステップしてから助走を始める。そしてボールを蹴り込む。ゴールネットが揺れた。ガッツポーズをひとつ入れると、ゴール裏に向けて人差し指を向けてアピールした。
 
「ここまで決定的なチャンスを外していましたから、ホッとしました」
 
 小林は88分にピッチをあとにしている。交代した小林真鷹、そして戦う仲間たちに闘志は託してきた。そして、タイムアップ。ひとまず、昨年のベンチ外選手が抱いた野望は結実した。
 
「佐藤(一樹)監督には『決めるのが遅いな』って終了後に言われたんですけど、決め切れない自分を最終盤まで使ってくれたことに感謝しています。まだまだ監督の求めているレベルには達していないと思うんで、もっと頑張らないといけませんね。
 
 チームとしては、昨年の先輩方が成し遂げられなかった3冠(高円宮杯U-18プレミアリーグ、Jユースカップ)を目指したい。個人としては、J3(FC東京U-23)やこのチームのどちらでもプレーすることになると思いますが、与えられた場所で常に100パーセントを出すだけです」
 
 小林の終着駅は遥か彼方だ。道程はきっと険しく、一筋縄ではいかない困難にぶつかることも多々あるだろう。それでも、負けずに突き進んでほしい。「結果にこだわりたいです」。最後にそう残した男がスケールアップする姿を、また見せてもらえることを願っている。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)

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