2016年11月28日に起きた事件を、覚えている方は多いはずだ。ブラジルの1部に所属するクラブ、シャペコエンセの一行を乗せた飛行機が墜落し、多くの尊い命が犠牲となったあの大事件だ。


 あれから、およそ9か月が経った。クラブ存続の危機に直面したシャペコエンセはしかし、着実に復興へと進んでいる。そして8月15日には、コパ・スダメリカーナ王者として臨むスルガ銀行チャンピオンシップで、浦和レッズと対戦する予定だ。
 
 シャペコエンセの来日を記念してお届けする、現地在住のサッカージャーナリスト、沢田啓明氏が飛行機事故からの同クラブの歩みを追ったドキュメンタリー連載の第2回は、復興に向けて歩み出したチームが直面する日程の過密さについてである。
 
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 2016年シーズンに果たした躍進の“果実”として、17年シーズンのシャペコエンセには超過密日程が用意された。すでに終わったしまったコンペティションも含めると、以下の7つだ。
 
?サンタカタリーナ州選手権:州内10クラブが参加。第1ステージ(全9節)が1月29日から3月5日まで、第2ステージ(全9節)が3月22日から4月30日まで。各ステージの勝者が、5月上旬にホーム&アウェーで優勝決定戦に臨む。
 
?プリメイラ・リーガ:ブラジル南部を中心とする6州の強豪16クラブが参加。4チームずつ4グループに分かれて1月24日から3月1日までに3試合を戦い、以後、各グループの上位2チームがホーム&アウェーのノックアウト方式で対戦する。
 
?コパ・リベルタドーレス:欧州のチャンピオンズ・リーグに相当する南米王者を決する大会。32チームが4チームずつ8グループに分かれ、3月7日から5月23日まで総当たりのホーム&アウェーでグループステージを戦う。各グループの上位2チームが以後、ホーム&アウェーのノックアウト方式で対戦。
 
?レコパ・スダメリカーナ:コパ・スダメリカーナ王者として臨むスーパーカップ。コパ・リベルタドーレス王者のアトレティコ・ナシオナル(コロンビア)と、ホーム&アウェーで4月に対戦。
 
?ブラジル全国リーグ:国内リーグのファーストディビジョン。20チームが参加し、5月6日から12月3日までホーム&アウェーの総当たりで38節をこなす。
 
?コパ・ド・ブラジル:国内カップ戦で、91チームが参加して2月に開幕。ベスト16にシードされているシャペコエンセの試合は5月から。
 
?スルガ銀行カップ:8月15日に昨年のルヴァンカップ王者である浦和レッズと埼玉スタジアムで対戦する。
 
 この他、バルセロナが主催するジョアン・ガンペール杯に招待されている。開催日は8月7日で、会場はカンプ・ノウ。当然ながら、バルセロナが相手だ。
 
 要するに、1月末から少なくとも4月末まで州選手権を戦い、それと並行してプリメイラ・リーガに出場。3月7日から少なくとも5月23日までコパ・リベルタドーレスに臨み、5月6日から12月3日までは全国リーグを戦う。

 その間、コパ・ド・ブラジルに参戦し、レコパ・スダメリカーナ、スルガ銀行カップに参加。これにジョアン・ガンペール杯を含めると、最少で72試合、最多で94試合をこなさなければならない……。
 殺人的なこの日程に対応すべく、シャペコエンセは2月下旬までに25選手を獲得し、U-20の9選手をトップチームへと引き上げた。

 事故前から在籍する選手が4人おり、そこにあの悲劇から生還して数か月後の復帰を目指すCBネットと左SBアラン・ルシェウを含めれば、メンバーは総勢40人。A(一軍)とB(二軍)の2チームを編成し、日程と大会の重要度に応じて使い分けている。
 
 Aチームの基本フォーメーションは4-2-1-3。ダブルボランチは、1対1の守備に定評のあるベテランのアマラウと、昨年は京都サンガで活躍したアンドレイ・ジロットのペアがファーストチョイスで、トップ下の定位置をテクニシャンのアレハンドロ・マルティヌッシオと運動量が豊富なナジソンが争う。
 
 右ウイングはスピードとテクニックを兼備するロッシ、CFは決定力に秀でるウェリントン・パウリスタか、長身で空中戦に抜群の強さを発揮するトゥーリオ・デ・メロで、左ウイングは精度の高いクロスが持ち味のニウチーニョという布陣だった。
 
 ヴァグネル・マンシーニ監督は、中盤で激しいプレッシャーをかけてボールを奪い、手数をかけず素早く縦に攻めるスタイルを志向する。

 しかし、1月頃のチームは連係が不十分で、守備はカバーリングのミスが多く、攻撃は最後の崩しの場面でなかなか呼吸が合わなかった。それもそうだろう。チームの主力がほぼ入れ替わっているのだから。
 
「奇跡のクラブ」が挑んでいるのは、事故で露と消えたクラブとチームを同時に再建するという、世界サッカー史上でも前例のない極めて困難なタスクなのである。
 
(第3回につづく)
 
取材・文:沢田啓明
 
※ワールドサッカーダイジェスト2017.03.16号より加筆・修正
 
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【著者プロフィール】
さわだ ひろあき/1986年にブラジル・サンパウロへ移り住み、以後、ブラジルと南米のフットボールを追い続けている。日本のフットボール専門誌、スポーツ紙、一般紙、ウェブサイトなどに寄稿しており、著書に『マラカナンの悲劇』、『情熱のブラジルサッカー』などがある。1955年、山口県出身。