前編に続きまして、僕が推奨する「今季Jリーグの必見ボランチ」を紹介させてもらおうと思います。6人目からとなります。
 
 あらためて文中に出てくる「ゾーン分け」の説明をさせてもらいます。フィールドを3分割して、自陣ゴール前が「ゾーン1」、中盤エリアが「ゾーン2」、相手ゴール前の「ゾーン3」。それぞれのボランチがどのゾーンで強みを発揮するのかも示していきます。
 
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レオ・シルバ(鹿島アントラーズ)
 こちらは二川(孝広)選手が「ナンバー1だ」と評価していました。ゾーンを分けて考えるまでもなく、すべてのゾーンで高いクオリティーを示します。その中でも一番のポイントに挙げられるのが、ボール奪取力の高さです。
 
 ヴィッセル時代に対戦相手として分析した際、「レオ・シルバ選手が近くに来たらパスをして逃げるように」という指示が出ていたほど。相手チームにとっては脅威以外のなにものでもないのです。実際はそんな指示が出ていても無視して、チャレンジを挑んでいる選手が何人かいましたが。
 
 僕自身、当時の印象としてボール奪取の部分だけが優れていると思っていましたが、現在のアントラーズでのプレーを見ると、捌きや前線への飛び出しもかなりのもので、運動量も申し分なしです。
 
 ゾーン3で相手のカウンターを防ぐプレーを見せるなど、危機察知能力も高い。本来は守備的なボランチだとカテゴライズできますが、パートナーに合わせて、攻撃的にも守備的にもなれる選手だと思います。
 
 そういう意味では、よくスカウトがこのレベルの選手を見つけて日本に連れてきてくれたなと感心します。
 
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ソウザ(セレッソ大阪)
 去年、一緒にプレーしていて感じたのは、どのゾーンでも満遍なく高いレベルのプレーができるということ。凄かったです。総合力の高いボランチですね。
 
 ヴィッセルのニウトン選手に似たスタイルですが、より広範囲に動き回り、攻撃も守備もそつなく行ないます。今季の開幕時はまだ、J1のプレースピードに対して戸惑いがあったようですが、ユン・ジョンファン監督の的確な指導があったのでしょう、いまではプレーの選択が実に洗練されている。得点もアシストも決めるなど、攻撃の部分で目立つ活躍ができるようになりました。
 
 ゾーン1(自陣ゴール前)では本来の力強さも発揮して、突破されそうなところでしっかりブロックしてきます。チームを首位に導いた立役者のひとりだと思います。
 
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大島僚太(川崎フロンターレ)
 彼の個性はゾーン3で発揮されます。相手ゴール前でのプレーの質と精度。今回選んだボランチの中で、いちばんセンスがあるのではないでしょうか。ガンバユース育ちとしては、彼のセンスには魅了されます。
 
 中盤エリアや自陣のエリアからビルドアップする際、本当はボールが取られると危険なので、リスクを冒したプレーは避けがちです。でも彼の場合は、そのあたりでのミスがまるでない。厳しい状況下でもしっかり突破していけるのです。
 
 そのため、ビルドアップを志向する監督、クラブが欲するタイプだと思います。プレッシャーが強くかかる中でも、選択肢が多く、しかも正しい選択ができる、相手に脅威を与えるプレーヤーです、
 
 加えて、パスの出し手としてだけでなく、受け手としても優れています。前線への飛び出しや、時間を作るタメのプレーを相手ゴール前でこなせます。こうしたプレーは、攻撃的なポジションの選手でもなかなかできないのですが、それをボランチにして高い質でやれる。大変貴重な存在だと思います。
 
 やはり、同じチームでプレーしている中村(憲剛)選手の影響が大きいのではないでしょうか。中村選手と感覚的に似ていますし、パスを出す選手がふたりいて、どちらも前線へ飛び出せる。昔のガンバで言えば、二川選手、遠藤(保仁)選手のコンビと同じような関係性なのかなと思います。
 
 日本代表に返り咲き、彼の特徴が出るサッカーを見せてほしいですね。
 
[File 9]
小島秀仁(愛媛FC)
 ゾーン2と3で特徴が現われます。攻撃時の視野の広さや決定的なパスはもちろん、シュート力もあります。
 
 愛媛の監督が代わる中でも、それぞれの指揮官が望むプレーやスタイルを表現しています。彼が安定したパフォーマンスを出し続けていること、そしてその質が年々高まっていることが、愛媛の順位安定に繋がっているのではないかと思います。
 
 対戦時の分析をする際、小島選手はとりわけ質の高いプレーをしてくるので、パスの選択肢を減らすように要求されました。僕から見てだけでなく、多くの監督やコーチからも評価を得ているボランチだと思います。
 
[File 10]
藤本寛也(東京ヴェルディユース)
 最後の10人目は、我がチーム、東京ヴェルディのユースチーム所属の高校3年生、藤本選手です。ユース選手ながら現在トップチームで練習を共にしています、
 
 ここに挙げさせていただくにはまだまだレベルアップが必要な選手ですが、そのポテンシャルが素晴らしい。そう遠くない未来に、他の9人に肩を並べられる日が来るのではないか。そんな期待を込めて、今回選ばせてもらいました。
 
 彼の武器は、ゾーン2と3で発揮されます。パスを主体としたプレーヤーで、プレッシャーがかかった中でも最良の選択ができます。間を通すのが難しいタイミングでもしっかりパスを通してくる。安全なパス選択をするのではなく、チャレンジすることを忘れず、逃げのパスがほぼありません。
 
 味方が欲しがるタイミングでパスが出せて、3人目の動きを意識しながらボール回しができます。気持ちの部分も強く、2020年の東京オリンピック出場を見据え、成長したいという意欲に満ちています。
 
 東京ヴェルディには、ほかにもプロ1年目の渡辺皓太選手、2年目の井上詩音選手と、ボランチには有望な選手がいます。彼らふたりも東京オリンピックに出場できる世代で、すでにJ2の舞台で活躍しつつあります。
 
 そんな先輩コンビを抜いて試合に出場し、そしてふたつ年上のプロで結果を出している世代に勝っていかなければオリンピックへの道は開けません。これは並大抵な覚悟や頑張りでは難しいでしょう。
 
 以前、セレッソの杉本(健勇)選手がロンドン・オリンピックに出るため、ヴェルディに3か月間在籍していました(レンタル移籍)。出場機会を求めての行動。そうです、覚悟が成長を早めるのです。プロ選手になるのはサッカーを始めた時にみんなが持つ夢ですが、その先の夢は、どれだけ求めるのかによって変わってくる。サッカー選手にとってとても重要なことです。
 
 夢を持って前へ進んでいける選手こそが、本当に強いハートの持ち主なのです。
 
 藤本選手にはそれがあると信じています。「必見」という観点からは少しズレてしまったかもしれませんが、10人目として挙げさせていただきました。
 
 ほかにも紹介したい名ボランチはいましたが、編集部担当の方から「各チーム1名まで」と言われていたので、このような人選となりました。メジャーなところは避けたつもりですが……避け切れてなかったかもしれません。
 
 今回も読んでいただいてありがとうございました。また違うテーマや切り口で、思うところを書かせていただこうと思います。
 
橋本英郎
 
<了>

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PROFILE
はしもと・ひでお/19795月21日生まれ、大阪府大阪市出身。ガンバ大阪の下部組織で才能を育まれ、1998年にトップ昇格。練習生からプロ契約を勝ち取り、やがて不動のボランチとして君臨し、J1初制覇やアジア制覇など西野朗体制下の黄金期を支えた。府内屈指の進学校・天王寺高校から大阪市立大学に一般入試で合格し、卒業した秀才。G大阪を2011年に退団したのちは、ヴィッセル神戸、セレッソ大阪、長野パルセイロでプレーし、今季から東京ヴェルディに籍を置く。日本代表はイビチャ・オシム政権下で重宝され、国際Aマッチ・15試合に出場した。現在はJリーガーとして奮闘する傍ら、サッカースクールの主宰やヨガチャリティー開催など幅広く活動中。Jリーグ通算/427試合・21得点(うちJ1は339試合・19得点/2017年8月7日現在)。173センチ・68キロ。血液型O型。公式ブログは、http://pakila.jp/hashimoto/