8月4日から7日にかけて、福島県郡山市を中心に行なれた『第6回福島復旧・復興祈念ユースサッカー大会』。この大会は郡山市に校舎がある強豪・尚志高校サッカー部の仲村浩二監督と、帝京安積高校サッカー部の小田晃監督のふたりが中心となり、2012年に立ち上がった大会だ。
 
「2011年に東日本大震災があってから、福島県の状況は一変してしまいました。原発事故の影響で、福島県に他県の人が来なくなってしまった。僕らはここに住んでいて、もちろん放射能に対する恐怖はあった。でもこの福島でサッカーを頑張ることで、震災前のような活気のある場所にしたかった。もっと福島にいろんなところから来てもらって、サッカーを通して福島の良さを知ってもらいたい。そういう想いから、小田監督とともに始めました」(仲村監督)
 
「僕と浩二さんで話をしていて、2011年の震災後に福島に県外から誰も人が来なかった。逆にこっちが県外に行くと白い目で見られることがあった。その中で少しでも福島に来てもらって、改めて良さを感じてもらって、経済面、意識の面でも変化をさせたいという想いから、サッカーを通じて取り組もうと思って始めました」(小田監督)
 
 尚志高校の人工芝グラウンドを中心に、全国から強豪校を呼び、大会形式ではなく、いろんなチーム同士が対戦できるレギュレーションだ。
 
 今年で6回目を迎える大会には、北海道大谷室蘭、旭川実業、大船渡、聖和学園、ベガルタ仙台ユース、新潟明訓、帝京長岡、共愛学園、明秀日立、日体大柏、湘南ベルマーレU-18、三重、綾羽、京都橘、大阪桐蔭、大津、神村学園が参加。北は北海道から南は九州まで、ほぼ全地域から強豪校が集まった。ここに主催地となる尚志、帝京安積と、地元の郡山を加えた全20チームがすべてAチームで戦い、合間にはBチーム戦もやるという大規模な大会に発展した。
 
「最初は福島の今を知ってもらいたい、福島の経済界にも活気をもたらしたいというところからスタートしましたが。今は各チームに協力してもらいながら、それぞれのチームが強化の貴重な場としても受け止めてくれるようになった。本当にありがたいことです」
 
 この仲村監督の言葉通り、尚志高校グラウンドを中心とした全5会場でハイレベルな攻防が繰り広げられた。尚志VS大津、京都橘VS尚志、大津VS新潟明訓、神村学園VS大阪桐蔭、旭川実VS神村学園、湘南U-18VS北海道大谷室蘭など、普段見られないような組み合わせのゲームが目白押しで、なかでも京都橘VS尚志、大津VS新潟明訓の戦いは非常にハイレベルだった。
 
「今大会の目玉は大津高校を招待したことなんです。熊本も震災で甚大な被害を負った。福島と熊本、そして今回は、津波被害の大きかった大船渡も来てくれた。すごく意義あるものになったと思います」(小田監督)
 
 大津はインターハイこそ出場できなかったが、今季もプレミアリーグWESTを戦う強豪。CB福島隼人、MF水野雄太、大崎舜ら優秀な2年生を揃え、正確なパスワークと個の打開力を見せる質の高いサッカーを展開する。こちらも組織的なサッカーが自慢の新潟明訓との攻防戦は、見応え十分だった。京都橘もインターハイベスト8のメンバーがそのまま出場し、同じくベスト16の尚志と非常に締まったゲームを繰り広げた。
 
 4日間の激闘は、各チームに大きな経験と財産をもたらした。同時に福島に集結した全国17チームの選手やスタッフが、福島のサッカー熱、福島の今を感じて、それぞれの地元に帰っていった。非常に意義深い4日間だったように思う。
 
「こうして福島に来ていただいて感謝してますし、少しでも福島でこういう大会が行なわれていることを認知してもらえたら嬉しいです。今はもう福島の放射線の量も収まってきています。もちろん、まだ原発周辺には入れない場所があったり、再び何かが起こるかもしれない危険性は確かにありますが、復興しようとするパワー、変わらぬ日常を歩んでいる現状を、これからも感じてもらえたらなと思います」(小田監督)
 
「今回、京都橘も校長先生が『福島の大会なら参加すべきだ』と言って、スケジュールがタイトの中でも来てくれた。サッカーファミリーの想いが伝わる大会だったと思います」(仲村監督)
 
 来年の第7回大会では、さらに充実した大会を目ざすという。同時に福島のサッカー界がより活気づき、盛り上がっていくように──。大きな志を持ったふたりの指揮官の熱意を十二分に感じた、4日間だった。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)