[J1リーグ・21節]大宮 1-2 FC東京/8月9日(水)/NACK
 
 70分に同点とされた3分後だった。J1通算400試合出場を自ら祝う先制弾を決めた前田遼一との交代で、J1通算得点最多記録保持者である大久保嘉人が73分にピッチに立った。
 
 そして迎えた77分。歴代屈指のゴールハンターは、その能力を遺憾なく発揮して大宮のゴールネットを揺らした。勝ち越し、そして結果的に決勝ゴールとなったチーム2得点目はどうやって生まれたのだろうか。
 
 本人は「ボールが自分に入った時点で勝負ありだった」と語る。当時の状況を整理しよう。まずはチャン・ヒョンスから大久保へパスが出た。それをワンタッチで高萩洋次郎へ落とすと、ワイドに張った丸山祐市へとつなぐ。
 
 大宮の守備の人数は揃っているが、最終ラインの裏を狙ったボールが供給されると、これを太田宏介が追った。そしてラインを割るギリギリのタイミングで、鋭角に中へと折り返す。大久保は少し戻りながら足もとにボールを収めた。
 
 相手GKの加藤順大を含めると、その時点で4人の大宮の選手が前にいる。カウエも戻ってきてシュートコースを塞ぐ。それを嘲笑うかのように、ひとつ呼吸を置いて、冷静に右足を振り抜く。シュートは見事に守備者の逆を突き、コースを射抜いた。
 
 以下、解説に大久保の言葉を借りる。
 
「シュート1本で、それが決まったので良かった。カウエが奪いに来なかったので『ああ、入ったな』と。ゴールは見ていない。相手DF、ゴールとの間に割ってきたカウエを見ていました。
 
 ファー(右)へのシュートコースを切るだろうと思ったので、彼が通り過ぎてから打とうと決めていた。あいつは絶対に右に蹴ると思ったんじゃないかな」
 
 すでに残り時間は15分を切っていた。追い付かれて1-1というスコア、ペナルティエリア内という場所。ともすれば焦ってDFに当てる、または枠からシュートを逸らすシチュエーションで、大久保の脳内はフル回転していた。
 
 もちろん狙った場所に寸分違わずに蹴り込む技術があっての決勝点ではあるだろう。しかし、「急いだところで得点が入るわけじゃないし、どこかでメリハリをつけてプレーしないと」という豊富な経験に裏打ちされた余裕も、このゴールを生んだ要因のひとつではないか。
 
 今季7ゴール目。YOSHI METERは「178」へと更新された。齢35にして、大久保はいまだ働き盛りである。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)

【大宮1-2FC東京 PHOTO】途中出場の大久保が7戦ぶりゴールで決勝点!