[J1リーグ21節]清水3-2C大阪/8月9日/アイスタ

 久しぶりにギラギラして尖った選手を見た。
 
 常に飢えているなぁという感じの精悍な面構え。人を射抜くような鋭い眼光。身体全体から何かをやってくれそうな匂いをぷんぷんさせる。最近は妙に優等生でおとなしい選手が多く、ギラギラ感のある選手は絶滅危惧種になりつつあったが、清水エスパルスの左サイドバック・松原后は久しぶりに出てきた野性味あふれるプレイヤーだ。
 
「俺がこのチームを勝たせるという気持ちでやっています」
 
 サイドバックながらまるでストライカーのような意識もいい。
 
 もともと浜松開誠館高時代は2年生の途中までFWだった。叔父にはストライカーとして清水や磐田で活躍した元サッカー選手の松原良香がおり、血筋的には点取り屋。その血が松原の中に脈々と流れ、試合を決めることに魂を焦がす。
 
 実際、松原はゴールを狙い、見ているファンの腰を浮かせるようなプレーを見せる。
 
 セレッソ大阪戦では、ゴリゴリの攻撃から2ゴールに絡み、勝利に貢献した。
 
 51分に左サイド、縦から斜めに切り込むようにボックス内に侵入すると、対応に慌てた田中裕介に倒されてPKをもらった。
 
「左サイドからボックス内は俺のゾーンなんで」
 
 それは、“松原ゾーン”ともいえるもので、そのエリアでの仕掛けに絶対的な自信を持つ。
 
 73分には、左サイドから相手の意表をつくグラウンダーのクロスをマイナスに入れて、北川航也の決勝ゴールを生んだ。
 
「相手の股を狙ったけど、マイナスにいけば空くのが分かったんで」
 
 仕掛ける時は「目前の相手に絶対に負けたくない」という熱い気持ちで挑むが、猪のように突撃するのではなく、冷静に周囲を見て状況判断している。
 
 プレーでファンやサポーターから「おぁー」と大きな歓声を受ける選手が少なくなったが、松原はボールを持てば相手を抜きにかかり、スタジアム場内の空気を劇的に変えてくれる選手なのだ。
 
「もともとやれる自信はあったんですけど、今はそれを試合で出せるようになって結果につながっている。サイドバックですけど、結果にこだわり、結果を出せる選手になりたい」
 
 攻撃の意識が非常に高いが、かといって守備を軽んじているわけではない。
 むしろサイドバックとして守備は攻撃よりも重要で、「軽い失点や連係ミスでの失点は今後修正しないといけない」と、厳しい表情を見せる。
 
 もちろん課題もある。
 
 ややボールを持ち過ぎる時があり、周囲を上手く使っていくなどメリハリをつけることができれば、もっとチャンスを作れるだろう。また、小林監督が「サイドからの質を上げていかないといけない」というようにクロスの質を上げていかないといけない。
 
 C大阪戦もアシストにつながるクロスを入れたかと思いきや、ボワーンと山なりのクロスを入れたり、ニアに引っ掛かっていたりしていた。得点の可能性のあるクロスを入れる確率を高め、クロスの種類を増やしていくことができれば、より結果を残せる選手に成長し、相手の脅威になっていくだろう。
 
 松原は、リオ世代だ。
 
 リオ世代では、すでに久保裕也、浅野拓磨、井手口陽介らが日本代表入りを果たしている。松原は、過去、カテゴリー別の代表には縁がなかったが同世代に負ける気はない。
 
「俺は代表に入っていませんけど、見据えている先はもっともっと上なんで同年代は意識していないです。俺はどんどん上にいって松原后っていう存在を大きくし、左サイドバックとして代表でプレーできるようになりたいです」
 
 そう言う表情からは、負けん気の強さと自分への深い自信を垣間見ることができる。
 
 まだ20歳、182センチと身体が大きく、スピードもある。気持ちが強く、海外での試合に向いているタイプ。清水のレジェンドのひとりでスケールの大きなサイドバックだった市川大祐を越え、日本代表にという期待も大きい。今のままあまり丸くならず、プレーも言葉も気持ちもギラギラしたまま、左サイドを駆けるように伸びてほしい。
 
取材・文:佐藤俊(スポーツライター)