[ロシアW杯アジア最終予選]サウジアラビア1−0日本/9月5日/キング・アブドゥラー・スポーツ・シティー

 本田圭佑が45分で姿を消した。
 
 ハリルホジッチ監督の予定通りということだったが、指揮官の温情起用に結果で応えられず、ほとんど何もできないままピッチを去った。動けない、ミスを連発、さらに攻守にスピードを意識したサッカーに抗うように「持ちたい」プレーで流れを淀ませてしまうのでは、かつてのカリスマ的な存在もその影響力を失うばかりだ。
 
 本田本人も「全然ダメ」と自らの腑甲斐ない出来を反省していたが、もはやその姿は「消えゆくライオン」である。そんな本田を見ていると、あの時のカズ(三浦知良)の姿と重なってしまった。
 
 1997年のフランス・ワールドカップ最終予選、カズは日本代表のエースだった。初戦のウスベキスタン戦では4ゴールを決め、エースとしての存在感を示した。しかし、その後はゴールを決められず、加茂周監督が解任されるなどチームが下降線を辿っていった。すると徐々にエースへの風当たりが強くなっていった。
 
 第3代表決定戦のイラク戦では試合途中でスタメンの中山雅史とともに城彰二、呂須比ワグナーと交代。まさかの2枚同時交代は衝撃的だった。調子が戻らない絶対的なエースの存在感が薄れ、もしかしたらもうカズの時代ではないかもしれないと思わせる象徴的なシーンだった。そして翌年、フランス・ワールドカップ直前合宿でカズはメンバーから落選した。
 
 本田も南アフリカ・ワールドカップで活躍してからカズ、中田英寿、中村俊輔に続く絶対的なエースとして、日本代表の中で確固たる地位を築いてきた。ザッケローニ時代は香川真司、岡崎慎司、長友佑都らとチームを引っ張った。
 
 ハリルホジッチ監督の体制になってからも自らと香川が攻撃の軸になり、彼らのプレーがチームの結果に大きな影響を与えていた。実際、最終予選のスタートになったUAE戦では本田が先制点を挙げ、「本田の時代はまだ続くな」と誰もが思ったはずだ。しかし、それ以降、徐々にパフォーマンスが落ち始め、存在感が薄れてきた。
 その姿が20年前のカズと似ているのだが、実はチーム状況もよく似ている。
 
 あの時は最終予選から22歳の城をはじめ、呂比須ら新しい選手が出てきた。呂比須は1−0で負けていたアウェーのウズベキスタン戦で終了間際にゴールを決め、日本を救った。城もイラク戦で価値ある同点ゴールを決めた。そうしてチャンスをモノにしたふたりはフランス・ワールドカップのメンバーに入り、城はカズに代わって日本代表のエースになった。
 
 現チームでも本田の代わりに23歳の久保裕也や22歳の浅野拓磨ら若い選手が台頭してきた。彼らは試合に出るとすぐさま結果を出し、ロシア・ワールドカップのメンバー入りに向けて着々と足下を固めている。そうした若く新しい勢力に本田は押し出されつつある。
 
 もちろん今の本田がベストではないことは確かだ。昨シーズン後半、ミランでほとんど試合に出場できなかった。夏にメキシコのパチューカに移籍後も、怪我のためにオーストラリア戦まで2試合の出場に終わり、いずれも途中出場だった。1ゴールは決めたもののコンディション、プレーの精度など全盛期の本田ではない。 
 
 それゆえ、本田はここからが最後の勝負になる。フランス・ワールドカップイヤー、カズはJリーグで12試合4ゴールを挙げていた。悪くはなかったが最終的にメンバーから外された。絶対的な存在だった選手は並みの活躍では誰も納得しないということだ。
 
 このままメキシコで結果を出せなければあの時沸き上がった「カズ不要論」のように「本田不要論」が声高に叫ばれるだろう。そうして本田を見る視線は一層厳しくなる。
 
 誰にも文句を言わせない結果を残し、ハリルホジッチ監督が求める速いテンポのサッカーの中で何か変化をつけられた時、序列に再び変化が生じる。残された時間が少ない。カズが越えられなかった壁を果たして本田は越えられるだろうか。
 
取材・文:佐藤俊(スポーツライター)

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