[J1リーグ30節]神戸 1-2 鳥栖/10月21日/ノエスタ

 元ドイツ代表のポドルスキが上か、それとも元コロンビア代表のイバルボか――。
 
 さながらJ1最強の助っ人外国籍選手を決める「夢の競演」を見ようと、約1万7000人がノエビアスタジアム神戸に集まった。
 
 このゲームにおける2人の数字を比較すると、シュート数はポドルスキが5本、イバルボ1本、パス本数はポドルスキ58本、イバルボ26本といった具合に。チームにおける役割やプレースタイルの違いもあるが、ポドルスキの方が明らかにボールに触っている回数が多く、それだけ試合に絡んでいたとも言える。
 
 だが、最も重要な得点という数字はともに1点ずつ。結局、互角だったという見方もできる。チームを勝利へ導くのがエースの証明だとすれば、鳥栖を勝利へ導くきっかけとなる同点弾を決めたイバルボの方がむしろ上。単なる数字の比較では、どちらが“最強”かの判断は難しいかもしれない。
 
 少しゲームを振り返る。先にワールドクラスを披露したのはポドルスキだった。右のボランチの位置まで降りてパスを受けたポドルスキは、左SBの松下佳貴へロングフィードを供給。松下がうまく相手DFを交わした瞬間、ポドルスキは左斜め前にダッシュしエリア内に侵入。そして松下の浮き球を田中順也が胸で落とし、ポドルスキが右足ボレーでゴールネットに突き刺した。
 
 自らサイドチェンジし、さらにフィニッシュまで持っていく。イバルボに大きく水を開けたパス58本という数字は、こうしたプレースタイルによるものだ。また、この先制点のプレーの凄さは、ダイアゴナルに走ってエリア内に入り、鳥栖DFの視界から消えた点にあるだろう。
 
 鳥栖のボランチ原川力はこう振り返っている。
「(試合前の分析では)左利きで、降りてきて、フラフラして、そこから攻撃を作られるイメージがあった。1点目はまさに警戒していた形でやられた」
 
 つまり、ポドルスキは事前に自らのプレー傾向を把握されながら、それでも自作自演で先制点を決めている。“分かっちゃいるけど止められない”。これがワールドクラスなのかもしれない。
 その点で言えば、イバルボも負けてはいない。17分の同点PKを引き出した“抜け出すプレー”は、もうファウルで止めるしかなかった。そのファウルを犯した神戸の高橋秀人はこう振り返っている。
「映像を見直さないと分からないけれど、ビルドアップの際に自分が降りてDF3枚で組み立てる。その形でナベ(渡部博文)がサイドに開いた時にボールを奪われ、守備の絞りが甘かったのが原因かなと思います」
 
 ボールの奪われ方の悪さから生まれた失点だったが、その好機を見逃さずにスルーパスを入れたボランチの高橋義希とイバルボの一瞬の動きが上回ったとも言える。少なくともイバルボのノータッチターンから一気に加速したあのスピードは、Jリーグではなかなか見られない迫力があった。
 
 結局どちらが最強と言えるのか――。
 
 このゲームを観る限りは、それぞれが持ち味を見せ、それぞれのやり方で敵の守備網に打撃を加えていたという点で、互角と言えるだろう。ただし、対応の難しさという点ではイバルボの方が1枚上だったかもしれない。
 
 高橋秀人がPKを献上したシーンもそうだが、松下佳貴や渡部博文らDF陣が完全に振り切られるシーンもしばしば。DFの背後へ抜け出すスピードに関してはJ1最強と言っていいだろう。プレーエリアも広く、捕まえにくい。おまけに最前線でのラインブレイクやポストワークだけに気を遣えばいいのかと言えばそうではなく、25分には中央の小野裕二へ針の穴を通すようなキラーパスで神戸サポーターの度肝も抜いている。対戦相手にとっては、かなり対応の難しい選手であるのは間違いなさそうだ。
 
取材・文:白井邦彦(フリーライター)