およそ20年ぶりに足を運んだ東福岡高校は、まるで様変わりしていた。かつての面影は跡形もなく、宮殿のような校舎と人工芝で埋め尽くされた広大なグラウンド。贅沢にも志波芳則総監督に構内を案内してもらいながら、ずっとぽかーんと口を開けていた。
 
 それでも、サッカー部を取り巻く空気感はどことなく変わっていない。
 
 先輩後輩の垣根がほぼないオープンな雰囲気があり、そのうえで途轍もない緊張感と集中力で練習に臨み、互いを高め合っている。3冠を達成した1997年当時も200人近い部員がいたが、現在は300人を超える大所帯だ。そんな彼らが一堂に会してボールを追う光景は、壮観ですらある。
 
 超が付く名門・ヒガシでキャプテンを担うプレッシャーは尋常ではない。かつて本山雅志や宮原裕司が着けた栄光のナンバー10は、攻撃の大黒柱にしか与えられない。今年、このふたつの栄誉を託されているのが、1年時から主要メンバーの攻撃的MF福田湧矢(ゆうや)だ。
 
「最初はどっちもプレッシャーでしかなくて、重かった。自分がやらなきゃいけないという責任感が強く出過ぎてしまって。でも、いろんな浮き沈みを経て、いまはそれを楽しめている自分がいます」
 
 インターハイ本大会は2回戦で青森山田の後塵を拝し、プレミアリーグWESTは勝ち切れない試合が続き、優勝戦線から脱落。福田は「今年のチームはレベルが低いと周りに言われてきた」と苦虫を噛み潰す。だがその中で、チームは反骨精神と一体感を培ってきた。主将だからこそ感じ取れる手応えがあるのだろう。「悔しさをバネにしてきた。走りの部分では負けない自信があるし、個が足りないならそこでカバーしようと、みんなで話してます」と力を込める。
 
 そんな東福岡から、今年はふたりのプロ選手が誕生した。守備の要のCB阿部海大はファジアーノ岡山の門を叩き、福田は、ガンバ大阪を進路に定めたのだ。
 
 夏にガンバの練習に参加した際は、少なからずショックを受けた。だが一方で、通じた部分もあったという。
 
「アンダー23とトップのどちらにも参加させてもらいました。レベルが高くて、当然ですけど高校生とは何段階も違う。とくにトップは凄かったし、遠藤(保仁)さんなんて次元が違うなと感じましたけど、意外とやれた部分があったんです。ドリブルというか、仕掛けのところは通用したので、少しですけど自信になりました。逆に守備はぜんぜん。話にならなかったです」
 
 来春の入団後は、ひとつ上の先輩でガンバに入団したMF?江麗央と同じく、U-23チームに軸足を置くだろう。仲がいいと言う?江からは常時アドバイスをもらっているという。そのガンバU-23を率いる宮本恒靖監督の印象を尋ねると、「少しだけ話してもらいました。すごくクールでしたけど、オーラが半端なかったです(笑)」と答えた。
 
 では、ガンバは福田のどこを評価して獲得するに至ったのか。ガンバOBで現スカウトの朝比奈伸氏を直撃した。1年時から動向と成長を注視していたようだ。
 
「福岡選抜で優勝した和歌山国体の時からですね。彼は高1でした。ボランチというか中盤の真ん中をやっていて、あの時の印象がものすごく強く残ってます。その後、東福岡ではあの独特のサイドアタッカーをやり、3年になってからはシャドー。ドリブルでの仕掛けができるし、ボールを持ってパスも出せるのはやはり魅力です。しかもキャプテンを任されてからは、積極性がいい意味でプレーにもよく表われているように思います」
 
 とはいえ、プロで一旗上げるためには、課題が少なくない。朝比奈スカウトは指摘する。
 
「やはり身体がまだ弱いので、プレッシャーの中で潰されたり、簡単にボールを取られることがある。こないだのプレミアリーグで、東福岡はガンバユースと戦って0−3で敗れた。ガンバの選手は彼が入団するのを知っていますから、かなり激しく行ってましたよ。選手権でも、徹底マークされると思うんです。その中でどれだけやれるかですね」
 
 ガンバの選手でロールモデルとなるのは、日本代表MF倉田秋あたりになるだろうか。局面打開を最大に武器としつつも、気の利いたパスでゲームを作るなど、中盤でのユーティリティー性がある。朝比奈スカウトも「確かに近いですね。シュウみたいなプレーヤーになってほしい。福田はハードワークでもできる選手ですから」と期待を寄せる。
 
 かたや、東福岡の森重潤也監督はこう見ている。
 
「1年の時にタイトルを総なめにした。インターハイ、国体、選手権の優勝メンバーで。2年の時はタイトルがなかったけど、全国でのトップレベルを知ってるなら、U-18(日本代表)であったり、そういう高いところを目標にしてほしい。その意味ではゲームを読むというか、流れを掴む瞬間的な判断というのは、まだ足りないのかな。(キャプテンになって)人一倍やろうって気持ちは伝わってきますよ」
 
 夏のリベンジを期す“赤い彗星”。守備陣は一定水準の強度を誇るだけに、いかにして強豪のゴールをこじ開けるかが鍵を握る。福田の奮迅の働きなくして、選手権での躍進は望めない。
 
「守備のところは明らかな課題ですけど、自分が得意とする仕掛けの部分をもっと磨いていきたいとも思ってます。U-18(日本代表)も目ざすべきところです」
 
 300人の部員を束ねるさわやか青年は、力強くそう言い切った。
 
 まずは選手権・福岡予選を突破しなければならない。東福岡の次戦は11月18日、東海大福岡と筑紫台の勝者と準決勝を戦う。
 
取材・文:川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)