いまガンバ大阪で赤丸急上昇中なのが、23歳のMF中原彰吾だ。
 
 2012年のJユースカップで大会史上初、決勝戦でハットトリックを達成し、北海道コンサドーレ札幌U-18を初優勝に導いた。翌春、晴れてトップチームに昇格。しかしながらその後は鳴かず飛ばずの日々が続き、タイのコンケーンFCでの1シーズンを経て、今春にガンバに期限付き移籍でやって来た。軸足を置いたのは、U-23チームである。
 
 本来は攻撃的な位置で力を発揮する選手で、守備的なポジションでの経験はほぼ皆無だった。それがガンバU-23ではチーム事情からセンターバックをこなし、守備面のタスクを担うこととなる。目を丸くしたのは宮本恒靖監督だ。「プレースピードが遅いと聞いていたが、サッカーIQがとにかく高い。常に前を向いてプレーできる選手ですね」と評する。中原は元日本代表CBの下で戦術眼に磨きをかけ、プレースピードを進化させた。
 
 さらに、山口智コーチの薫陶も受けた。「ヘディングがめちゃくちゃ苦手な子やな」と感じたガンバOBは、マンツーマンでみっちり指導。みずからボールを蹴り、落下地点への入り方、身体の向きや跳ね返し方を徹底的に教え込み、ヘディング技術を向上させた。
 
 不慣れなポジションながら、ふたりのレジェンドの下で自信をつけた中原は、日本代表戦で主力が大量に抜けたルヴァンカップ準決勝、セレッソ大阪戦で躍動する。遠藤保仁との2ボランチで先発起用され、ガンバでのトップデビューを果たしたのだ。デビュー戦を見守った宮本監督は「攻撃の起点になってシュートを撃っていたし、積極的に指示も出してましたね」と語り、山口コーチも、「セレッソの屈強な外国人選手との競り合いにことごとく勝っていた」とその成長ぶりに目を細めた。
 
 トップチームを率いる長谷川健太監督の信頼も勝ち取った。ルヴァンカップの後はホームのアルビレックス新潟戦で後半途中からJ1リーグ初出場を飾り、アウェーの浦和レッズ戦では初先発。レッズ戦後、長谷川監督の中原評はこうだ。
 
「初先発で、しかも埼スタのレッズ戦であそこまでやれる選手はそうそういない。ボランチは清水エスパルス時代から伊東輝悦、本田拓也、ガンバでもヤット(遠藤)、コンちゃん(今野泰幸)、ヨウスケ(井手口陽介)と、ベテランから若手まで見てきている。自分の感覚だが、中原もそこまでやれるレベルにあると思う」
 
 錚々たるボランチの名を口にし、その才能に期待を寄せた。
 
 中原は、「守備力は自分の本当に足りない部分だった。ツネさん、サトシさんという素晴らしい元日本代表のセンターバックに指導してもらったことは自分の大きな財産です」と謝意を示す。トップでの活躍後、宮本監督からは「(U-23で)待ってるぞ!」と冗談交じりに声をかけられたという。「トップで出続けることが恩返しになる。いまの目標は(ホーム最終戦の)札幌戦に出場すること。絶対に勝ちたい」と、古巣との対戦に闘志を燃やしている。
 
 今季U-23チームからトップに昇格し、実力を認められたのは中原ただひとり。「ゲームの中で君臨できる存在になりたい」と意気込む俊英は、持ち前の攻撃力にレジェンドから伝授された守備力をプラスし、さらなるスケールアップを目ざす。
 
 シーズンも残すところ3試合。札幌から来た男のパフォーマンスに注目だ。
 
取材・文:竹島麻里子(フリーアナウンサー)