12月8日から日本で開かれるE-1選手権に参戦する北朝鮮代表。9日の初戦でハリルジャパンと対戦するだけに、アジアの“古豪”の内情は気になるところだろう。
 
 25年ぶりの外国人監督招聘など、同国代表には様々な変化が起きているが、とりわけ最近、関心を集めているのは海外組の台頭だ。
 
 今年3月にカリアリに入団し、デビュー2試合目で同国選手としてセリエA初ゴールを叩き込んだハン・グァンソンはその筆頭。彗星のように現れた19歳のストライカーは、レンタル移籍中のペルージャでも今季7得点を記録中である。嘘かまことか、名門ユベントスやプレミアリーグのアーセナルも興味を示しているとの報道もあったほどだ。
 
 また、ハン・グァンソンのほかにも、北朝鮮代表にはチョン・イルグァン(FCルツェルン/スイス)、パク・クァンリョン(SKNザンクトペルテン/オーストリア)など欧州リーグでプレーする選手が少なくない。いずれも代表の主力であり、海外組はチームに欠かせない存在になってきている。
 
「在日Jリーガーを除けば、現在、国外でプレーしている選手は5人。ハン・グァンソンが所属するペルージャにもうひとり、スイスにもチョン・イルグァンのほかにもうひとりいます。ふたりはまだA代表で活躍するほどではないけれど、それでも海外組が育ってきていることは間違いありません」
 
 そう語るのは、在日本朝鮮蹴球協会理事長で同国サッカー協会副書記長も務める李康弘氏だ。近年は、国を挙げて選手育成に取り組むなか、海外リーグで実力を育む選手が目立っているのだという。
 
 気になるのは、同国選手が国外クラブに加入するまでのプロセスだが、「協会側が推薦しており、選手自ら海外進出を希望することもできる」と李理事長は説明する。また、クラブ側との交渉は、エージェントのツテを使うのが一般的だそうだ。
 
「FIFAが抱える各大陸の代表エージェントに相談しています。例えばパク・クァンリョンは2011年にスイスに渡りましたが、その時もエージェントの力を借りました。イタリア生まれイタリア育ちのスイス人男性で、FIFAとも付き合いの長い代理人です。もう高齢の方ですが、彼に頼ることは多いですね。昨年5月から代表を指揮するヨルン・アンデルセン監督が、欧州のクラブに選手を紹介することもありますよ」
 ただ、ハン・グァンソンのイタリア進出は、こうしたケースに当てはまらない。北朝鮮が2013年に開校した「平壌国際サッカー学校」の1期生として、欧州留学を経てプロ契約を結んだからだ。
 
 李理事長によると、同校はバルセロナの「フンダシオン・マルセット」とペルージャの「インターナショナル・サッカー・マネジメント(ISM)」と提携し、毎年、有望選手を派遣している。その第一号が、ハン・グァンソンだった。欧州と平壌を行き来する留学生活の中で実力をアピールし、セリエAのフィオレンティーナやプレミアリーグのリバプールからプロ契約を打診されていたらしい。
 
「平壌国際サッカー学校は、まだ設立から日が浅く、卒業生のほとんどは20歳前後ですが、今後はますます海外でプレーする選手が増えていく見込みです。これからは彼らが代表の主力になっていくでしょう。実際、すでにU-23代表には、平壌国際サッカー学校出身の選手たちが数多く選出されています」
 
 つまり、北朝鮮にはエリート選手を育成する環境が整いつつあるというわけだ。ちなみにハン・グァンソンは、スマートフォンを使って自身のInstagramに友人やチームメイトと交流している写真をアップしていたが、早期からの海外留学があったからこそ、いち早く欧州の環境にも適応できたのかもしれない。
 
 北朝鮮代表の海外組で、E-1選手権に招集されたのは、チョン・イルグァンと在日Jリーガー3人(金聖基/町田ゼルビア、安柄俊/ロアッソ隈本、李栄直/カマタマーレ讃岐)。ハン・グァンソンとパク・クァンリョンは来日しないが、いずれにしても、海外組がキーマンとなることは間違いないだろう。ハリルジャパンが彼らをどのように迎え撃つか、注目したい。

取材・文●李仁守(ピッチコミュニケーションズ)