ドイツの『ビルト』紙に、元ドイツ代表で、現在はJリーグのヴィッセル神戸でプレーするルーカス・ポドルスキがコラムを書いている。

 普段は陽気な応援エールが多いのだが、今シーズンの成績不振からペーター・シュテーガー監督が解任となると、さすがに彼も呑気ではいられなかった。
 
「遠く離れた日本にいるけど、ケルンっ子として、今の状況に涙を浮かべている。それは順位表のことだけではない。昨日発表された、ペーター・シュテーガーとの別れ。4年間、とても素晴らしい仕事をしてきたではないか。それだけに他の解決の仕方があったはずだ」
 
「これでは、敗者しかいない。ひとり矢面に立たされるのは、シュテーガーに相応しいものではなかった。これだけチームがカオスな状態に追い込まれても、彼は人として、一度も自分のラインを失うことはなかった。そのことを、私はとても評価しているんだ」
 
 ヨーロッパリーグ(EL)出場権獲得となるリーグ5位でシーズンをフィニッシュしたのは、ほんの数か月前のことだ。
 
 ケルンの街には喜びが溢れかえり、人々はこれ以上素晴らしいことはないと、美酒に酔っていた。「きっと来シーズンもうまくいくさ」。そんな言葉を交わし合ったことだろう。だがそれは「祈り」だったのかもしれない。そう簡単にはいかないことは、ファンならきっと分かっていたはずなのだ。
 
 躍進を遂げた中規模クラブは、主力選手をビッグクラブに奪われ、翌シーズンには過密日程でボロボロになっていく。ハノーファーも、シュツットガルトも、アウクスブルクも、フライブルクも……様々なクラブが苦しんだ。そんな様は、何度となく見られてきたのだ。ケルンにも同じような転げ落ちが待っていても不思議ではない。
 
 それでも、ファンはどこかで夢を見ていた。何とかなるかもしれない、と希望を失わなかった。首脳陣も、「このままではダメだ」と分かっていても、なかなか最後の一手を打てないでいた。
 
 優柔不断さが、状況をさらに悪化させたのかもしれない。もっと早く手を打っていれば、ここまで沈むこともなかったのかもしれない。あるいはポドルスキが指摘するように、別のやり方があったのかもしれない。
 
 いずれにしても、シュテーガーとの別れは、今一度、自分たちを見つめ直し、また一丸となって歩き始めるための大事な「儀式」となった。
 最後の試合となったブンデスリーガ第14節のシャルケ戦後、シュテーガーはファンに対し、帽子を取って挨拶し、これまでのサポートを感謝した。そして、シュテーガーの下で成長した選手たちは、恩師との別れに涙した。
 
「こうしたことは、私がケルンにいた頃にもあった。残念なことだが、それでも続いていくし、前を見ていかないといけないんだ」
 
 ポドルスキはそう言葉にした。だが、前を向いて次に続けていくためには、その前にしっかりとした総括がなければならない。
 
 空席だったスポーツディレクターには、アルミン・フェーが就いた。次期監督についても、近いうちに決断が下されることだろう(ウインターブレイクまではU-19チームを率いていたシュテファン・ルーテンベックが暫定で指揮)。
 
 もし2部降格となった場合でも、新しいスタートに意欲を持てる監督が求められているという。その条件に合う監督として、ビルト紙では、ウニオン・ベルリンを解任されたばかりのイェンス・ケラーの可能性が言及されたが、実際にどうなるかは、発表されるまで分からない。
 
 このような現在、大事なのは、選手の頭のなかが整理されているかどうかだろう。大迫勇也はシャルケ戦後、このようなことを口にしていた。
 
「今日は、チームとして踏ん張ることができた(追い付いての2-2)。そこは凄いプラスだと思うし、次に繋がるんじゃないかと思う」
 
 視線は次に向けられている。リーグ戦、残り試合はあと20しかないと思うのか。まだ20試合もあると思えるのか。一気に残留圏に浮上することなどできない。やれることを、ひとつずつやっていくしかない。その決意がチームとしてひとつにまとまった時、浮上へのきっかけが見つかるはずだ。
 
文:中野 吉之伴
 
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。