写真の愛好家であるエルネスト・バルベルデは、優れた観察眼の持ち主でもある。

 バルセロナの監督という重圧のかかるポストに就いても、決して自分を失うことはなく、言動はつねに控えめでありながら、役割の重みを十ニ分に自覚し、いかなる課題に突き当たっても的確な解決策を探り、事態を鎮静化する。

 持ち前の思慮深さと“チングリ”(バスク語で「蟻」の意)という愛称通りの黙々とした働きぶりは特筆に値する。リオネル・メッシがピッチでの牽引者なら、バルベルデはいわばチームとクラブの安心を支える礎のような存在だ。

 ネイマールの電撃退団、ウスマンヌ・デンベレとサミュエル・ウンティティの怪我、カンプ・ノウでの無観客試合、メッシの契約延長の遅れ……。バルベルデが今年5月にバルサの監督に就任して以来、直面してきたトラブルを挙げていけばきりがないほどだ。

 普通の神経の持ち主であれば、不平不満のひとつやふたつもぶちまけたくなるだろう。しかしバルベルデは、一切の不満や愚痴を口にせずみずからの任務を遂行しつづけた。

 ときには、バルセロニスタにとって聖域と化していた4-3-3システムを犠牲にしてでも、ジェラール・デウロフェウ、パコ・アルカセル、トーマス・ヴェルメーレン、パウリーニョといった異なる資質を持つバイプレイヤーを託みに戦力に組み込むことで、チームの快進撃を導いてきた。

 そうしたバルベルデの現実主義的な采配を物語るのが、電撃退団したネイマールの代役をパウリーニョが務めているという事実だ。

 もちろん、デンベレの怪我というアクシデントが決断の背景にあるわけだが、その結果が、現在の効率性を重視したチームカラーに繋がっているのは間違いない。

 逆に言えば、数々のトラブルに直面する中で、他に解決策が見つからないゆえの消去法的な選択でもあったはずだが、バルベルデはそのような困難な状況に陥っても、自分らしさを失わずにチームを指揮しつづけた。

 バルベルデのそうした懐の深さを象徴したのが、バレンシア戦、デポルティボ戦で誤審によりゴールを取り消された直後の発言だった。このとき指揮官は、判定を批判するどころか、逆に誤審によってゴールをプレゼントしてもらったマラガ戦のシーンを引き合いに出し、事態の鎮静化を図ったのだ。

 クラブが転換期を迎える中、バルサは理想の指揮官を見出したと言えるだろう。

 リーガで首位を快走し、チャンピオンズ・リーグのグループステージを首位で通過したチームにおけるバルベルデの功績の大きさは、メッシと双璧を成すと言っても過言ではないだろう。

 現在のバルサにおいて、フラッシュを灯すのがメッシであるなら、ファインダーで被写体を確実に捉えてシャッターを切っているのが“名フォトグラファー”バルベルデなのである。

文●ホセ・サマノ(エル・パイス紙/レアル・マドリー番記者)
翻訳:下村正幸
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