現在はフリーの身で、ウェールズ代表やプレミアリーグ・クラブの監督就任が取り沙汰されているライアン・ギグス。2014年夏から2年間、マンチェスター・ユナイテッドでコーチを務め、ルイス・ファン・ハール政権を支えたが、今回、英高級紙『The Times』で当時のエピソードを紹介している。ギグスが明かしたのは、オランダ人指揮官との激しい論戦。所属選手の売却についてだった。
 
 ファン・ハール監督は就任直後の14年夏、ダニー・ウェルベック、香川真司、ハビエル・エルナンデス(チチャリート)といった面々を放出し、さらに1年後にはロビン・ファン・ペルシ、アンヘル・ディ・マリア、ジョニー・エバンス、ラファエウらを移籍させた。昨年夏、指揮官に復帰したジョゼ・モウリーニョが「とんでもない売買をしてくれた。実に悲しい現実」と嘆いたほどだ。
 
 ギグスは、こう振り返っている。
 
「私とルイスは何度も話し合い、ときには激しく意見を交換したよ。でも彼には確固たるポリシーがあって、私の進言はほとんど受け入れられなかったんだ。個人的にいくつかの間違ったバイ・アンド・セルがあったと思うが、いまでも悔やまれるのは、ウェルベック、ラファエウ、エバンスの3人を手放したことだ。彼らはユナイテッドが育てた大切な生え抜きであり、宝だった。ウェルベックにはアピールするチャンスが、怪我だったエバンスには復調するための時間が与えられて然るべきだった」
 
 下部組織から育った生え抜きで黄金期を築く──。マンUの伝統であり、ギグス自身もポール・スコールズやデイビッド・ベッカム、ニッキー・バットら同世代のアカデミー出身者たちと一時代を築いた。指揮官ファン・ハールとクラブ首脳の“暴走”を止められなかったと、いまでも責任を感じているのだ。
 
 さらにギグスは、「キリアン・エムバペをパリ・サンジェルマンに、ガブリエウ・ジェズスをマンチェスター・シティに持っていかれたのはいただけなかった。とても大きな失望だったね」とも語っている。
 
 ちなみにモウリーニョ現監督も、1年半前の就任時に“売るべきではなかった3選手”の名を挙げている。「私なら絶対に売らない選手、絶対に買わない選手がいたよ。ファン・ペルシ、チチャリート、そしてウェルベック。なぜ売ってしまったんだ? あり得ないし、正気とは思えない」と断罪していた。