ネイマールほどアウェーチームのファンを苛立たせるバルセロナの選手はいなかった。ジェラール・ピケほど敵チームのファンからブーイングを浴びせられる選手もいなければ、リオネル・メッシほど相手チームのサポーターから畏怖される選手はいない。

そしてアンドレス・イニエスタほど、ホームとアウェーを問わずファンから尊敬を集める選手もいない。

 2002年10月のトップデビュー以来、つねに礼儀正しく模範的な選手であったが、ワールドカップ南アフリカ大会決勝のオランダ戦で、スペイン代表を初優勝へ導く決勝ゴールを決めて以来、その尊敬を集める度合いがさらに増した。

 交代を告げられピッチを去る際に、アウェーチームのファンからも万雷の拍手を受ける光景は、もはやリーガでは恒例になっている。

 今シーズン、ルイス・エンリケからエルネスト・バルベルデに監督が交代してもその状況に変わりはないが、どちらの指揮官がイニエスタの起用法に優れているかと言えば、後者に軍配が上がるだろう。

 L・エンリケはイニエスタを、腫れ物に触るように大切に扱いすぎた。ビッグゲームで試合勘の不足を露呈する機会が少なくなかったのは、前指揮官の過度な温存策がマイナスに響いたためだ。

 翻ってバルベルデは、イニエスタが試合に出られるコンディションにあると判断すれば、迷うことなくスタメンで起用している。また交代を命じる際にも、スタミナ切れを起こすか、あるいはスコアの上で試合が決したケースが大半だ。その一連の采配からは、イニエスタがチームにとって重要な存在であることを認め、評価しているからこその敬意の気持ちがうかがえる。

 開幕以来90分間フル出場を果たしたのは、9節のマラガ戦の1試合だけに留まっているものの、出場時間の増加に伴いピッチ内での存在感が向上しているのは、そうした指揮官の信頼の賜物でもある。

 また戦術面でも、バルベルデは粋な配慮を見せている。オフ・ザ・ボールの局面でエースのメッシを守備のタスクから解放させる一方で、イニエスタにはサイドに回らせ、空いた中央のスペースはパウリーニョにカバーさせるという決まり事はその一端だ。

 攻撃面では、メッシとともに攻撃を牽引。ふたりのコンビネーションプレーによるパス回しからの崩しや突破は、守備の強固さが増した反面、ウスマンヌ・デンベレの長期欠場などで純粋な攻撃力が減少したチームの、最大の武器のひとつになっている。

 今回のクラシコに向けてもモチベーションは高まる一方で、「ボールを保持し、効率的にプレーしなければならない。相手に付け入る隙を与えてはダメだ。パーフェクトに近い試合運びをしないとマドリーには勝てない」と意気込みを口にする。

 過去、敵地サンチャゴ・ベルナベウ開催のクラシコでは2ゴール・1アシストを記録。今回のクラシコでは、バルベルデの下で若々しさを取り戻したイニエスタのプレーに注目だ。

文●ラモン・ベサ(エル・パイス紙/バルセロナ番記者)
翻訳:下村正幸
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