アウクスブルクには今シーズン開幕前、キャプテンでオランダ代表右SBのポール・フェルハーフ(→ヴォルフスブルク)と元トルコ代表MFのハリル・アルティントップ(→スラビア・プラハ)がチームを去るという衝撃があった。
 

 ピッチ上だけではなく、様々な場面で他の選手に影響を持ったベテランの離脱……。ただでさえ、選手層の薄さを問題視されていただけに、今シーズンも例年通りに降格候補に挙げられていた。
 
 そんなアウクスブルクだが、前半戦最後の5試合を2勝2分け1敗と悪くない成績で乗り切り、9位という上々の成績で折り返すことができた。残留を第一目標にするアウクスブルクにとっては、納得のいく前半戦となったことだろう。
 
 チームはなぜ、立て直すことができたのだろうか。
 
 大きな支えとなっているのが33歳のボランチ、ダニエル・バイアーだ。昨シーズンは怪我に苦しみ、コンスタントな活躍を見せられなかったが、今シーズンはボランチの位置でチームを鼓舞。持ち味である長短を使い分けたパスワークでゲームをコントロールし、攻守にいぶし銀の活躍を見せている。
 
 アウクスブルクのような中小チームが勝点を積み重ねていくには、選手全員によるハードワーク、守備戦術の浸透、そして少ないチャンスからでもゴールを挙げるかたちが必要だ。この点において現在のアウクスブルクは、ブンデスリーガ屈指の得点パターンを持っている。
 
 アイスランド代表FWのアルフレッド・フィンボガソンは、バイエルンのロベルト・レバンドフスキ(15点)とドルトムントのピエール=エメリク・オーバメヤン(13点)に次ぐ前半戦11ゴールをマークした。
 
 前節フライブルク戦ではアディショナルタイムに2ゴールを挙げ、負けが濃厚だったチームに勝点1をもたらした。ペナルティーエリア内で相手DFから離れる動きが秀逸で、ダイレクトシュートでゴールを量産。両足、頭と、どこからでもゴールが決められるのが魅力だ。
 
 フィンボガソン好調の理由のひとつとして、ミヒャエル・グレゴリチュというパートナーの活躍があることも大きい。昨シーズンは自身に集中していたマークが、分散されたからである。
 
 ハンブルク時代には思うようなプレーができていなかったグレゴリチュが、アウクスブルクではトップ下として本領を発揮。チームとしての役割が整っているため、自由にチャレンジしても良い局面とシンプルなプレーとの選択が非常にスムーズだ。得意のミドルシュートを中心に、ここまで8ゴールをマークしている。
 フィンボガソン、グレゴリチュの2人にパスを供給するのが、左SBのフィリップ・マックス。リーグトップとなる10アシストを挙げ、ドイツ代表候補にも名前が挙がってきている。これまでも正確なクロスは高い評価を得ていたマックスだが、今シーズンはさらに磨きがかかっている。
 
 マックスが攻め上がってくれば、フィンボガソンやグレゴリチュは相手マークを外すことに集中すればいい。フリーになった瞬間に、これ以上ないタイミングとコースでパスが届けられるからだ。
 
 監督のマヌエル・バウムは「(代表入りに関して)そのうち彼を無視することはできなくなるだろう。SBでベスト選手のひとりだ。もちろん代表入りを果たすには、コンスタントに素晴らしいパフォーマンスを発揮し続けることが必要だ」と、太鼓判を押している。
 
 そして、そう言うバウム監督も、チームを見事にまとめ上げている存在として忘れてはならない。
 
 元教師らしく落ち着いた振る舞いで選手と向き合うことができ、ミュンヘンのサッカーマネジメント会社でスカウトとビデオ分析の仕事をしていた時の経験から、チームに何が必要かを適切に見極めることができている。
 
 好成績にも、バウムは「監督をそこまで重要な扱いにする必要はないと思っている。選手がピッチ上でプレーをするんだ。そのために私は、可能な限り彼らをサポートしようとし続けている」と、あくまでも謙虚な姿勢を崩さない。
 
 チームとしてのまとまりができているだけに、このままの調子でいけば、目標の残留は十分に達成できそうだ。
 
文:中野 吉之伴
 
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。