リオネル・メッシはゴールの収集家にして、名シーンの演出家でもある。

 ロスタイムに劇的な決勝ゴールを叩き込み、サンチャゴ・ベルナベウのスタンドに向かって背番号10のユニホームを掲げた昨シーズンのクラシコ(3-2で勝利)のゴールパフォーマンスは、まだ記憶に新しいところだろう。

 今回のクラシコでもメッシは、新たな名シーンを作った。

 PKを決めてチームメイトと喜びを分かち合ったあと、ひとりで相手のペナルティーエリア内にとどまったエースは、スタンドのファンに向かって深々と一礼。その後上体を起こすと同時に両手を広げ、みずからの存在をアピールするかのようなゴールパフォーマンスを演じたのだ。

 その瞬間、ベルナベウのスタンドからは大ブーイングが降り注ぎ、この日もまたメッシにスポットライトが集中した。しかし、今回の勝利はチーム全員で掴んだものであり、メッシはあくまでもその牽引役に過ぎなかった。

 今年8月のスペイン・スーペルコパで、マテオ・コバチッチをマンマークに付ける戦術でメッシ封じに成功したことに味を占めたジネディーヌ・ジダン監督は、この日も同様の作戦を採用してきた。今回はマンマークと表現するほど徹底したものではなかったが、メッシが“庭”とする敵の2ライン(DFとMF)間のスペースを封鎖する役割を、このクロアチア代表に託した。

 しかし、この作戦をバルサのエルネスト・バルベルデ監督はある程度織り込み済みだったという。

「相手がレオ(メッシの愛称)にマンマークを付けてくるか、中盤を厚くしてくるかわからなかった。だから、そのふたつの状況を想定してゲームプランを立てた」

 メッシ封じに躍起になった敵将ジダンに対し、バルベルデはあくまでもチーム全体のバランスを重視して試合に臨んだ。しかし前半については、「まったく自分たちのプレーをさせてもらえなかった」と劣勢を認め、さらにこう続けた。「相手がハイプレスを仕掛けてくることは予想していたが、われわれはそれを封じる術を見出せなかった」。

 実際に前半のパス成功数は、マドリーの262本に対してバルサは250本と下回っている。しかし、そんな劣勢の中で光ったのが、選手全員のインテンシティーの高さだ。そのハードワークの甲斐あって、バルベルデが「徐々にチャンスとゴールシーンを作れるようになった」と振り返ったように、バルサは状況を立て直していく。

 アンドレス・イニエスタが頭脳的なプレーを披露すれば、イバン・ラキティッチとセルヒオ・ブスケッツも粘り強いプレーで中盤を支配。なかでも特筆すべき活躍を見せたのが、パウリーニョだ。オーバーラップを仕掛けるセルジ・ロベルトのカバーリングに奔走したかと思えば、タイミングよくゴール前に飛び出し、メッシのクロスから際どいシュートを放つなど縦横無尽にピッチを動き回った。

 さらにその中盤が突破されても、最終ラインにはこの日も最後の砦としてマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンが君臨。ジェラール・ピケとトーマス・ヴェルメーレンの両CBも、終始安定したディフェンスを見せた。
 この前半の劣勢を凌いだことが、結果的に後半の爆発へとつながった。ジョルディ・アルバが自画自賛する。「後半は素晴らしい内容の試合ができた。胸を張ってもいい」。

 中盤の攻防を制し、相手のDFラインを下げさせ、マドリーの守護神ケイラー・ナバスにシュートの雨を降らせた。後半に限れば、パスの成功数はマドリーの190本に対してバルサは336本。シュートの数はマドリーの5本に対して14本と、スタッツからもバルサの優勢は一目瞭然だった。

 そして3つのゴールシーンでいずれも主役級の働きを見せたのが、他でもないメッシだった。先制ゴールの場面では、コバチッチのマークを引き付けることでドリブルで前進するラキティッチの進路を開けた。

 みずからPKを決めた2点目のシーンでは、ルイス・スアレスとのコンビでダニエル・カルバハルのハンドによるファウルを誘発。そして、マイナス方向への折り返しのクロスでアレイシ・ビダルの3点目をアシストした。

 クラシコ通算37試合で、25ゴール・13アシストを記録したメッシ。敵地サンチャゴ・ベルナベウでの試合に限れば、15ゴール・10アシストとさらに圧倒的な数字を残している。しかしイニエスタは、メッシの存在感はそうした記録の数々を超越したものだと断言する。

「メッシがチームに果たしている貢献度の大きさは、数字で測ることはできない」

 もっともこの日のバルサの勝利は、そうしたメッシの輝き以前に、チーム全員の頑張りが根底にあった。スアレスも証言する。「チーム全体のコンパクトな陣形から守備が連動し、効果的なプレスを仕掛けることができた」

 イニエスタはキャプテンらしく最後にこう締めくくってくれた。「バルサ独自のプレースタイルを維持しながら、日に日にチームとしての力がついていることを実感している」

 指揮官バルベルデが構築した組織的な戦術の中で、チームが攻守に高次元で機能し、メッシが決定的な仕事をやってのける。それこそがこの日のバルサの勝因だ。


文●フアン・イグナシオ・イリゴジェン(エル・パイス紙/バルセロナ番記者)
翻訳:下村正幸
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