欧州を揺るがす事態に発展しているのが、ショッキングな“毒盛り事件”だ。
 
 3月4日、ロシアの元スパイで、英国に亡命中だったセルゲイ・スクリパル氏とその娘が何者かによって有毒の神経剤にさらされ、意識不明の重体に陥っている。これを受けて英当局は、両者の身体から摘出した神経剤が旧ソ連時代に開発されたものだと断定。ロシア政府の関与が「きわめて高い」と発表したのだ。12日には同じく政治亡命していたニコライ・グルシュコフ氏も不審な死を遂げており、関連性を調べている。

 
 怒り心頭なのが、英国のテレサ・メイ首相だ。「これは英国に対する無差別で無謀な攻撃であり、市民の命を危険にさらす由々しき問題である」と国会で話し、アメリカ、フランス、NATO(北大西洋条約機構)などとも協議・連携していくと公表。23人のロシア人外交官の国外追放を決め、ロシア側も態度を硬化するに至った。
 
 懸念されるのはロシア・ワールドカップへの影響だが、イングランド代表チームの派遣は現時点で予定通りだという。しかしながら英政府は「首相をはじめ全閣僚と、ロイヤルファミリーの誰ひとりとしてロシア入りはしない」と断言。FA(イングランド・サッカー協会)の名誉会長を務めるウィリアム王子も現地には赴かないことが決定した。過去3回のワールドカップでは、ウィリアム王子、または弟のヘンリー王子のどちらかが代表チームの応援と大会視察に訪れていたが、今回は見送られる。
 
 ロシア側は事件への関与を全面的に否定しており、ロシア外務省は「もし英国がワールドカップをボイコットするなら両国と世界のスポーツ界に大きなダメージを与えるだろう」と忠告していた。
 
 次々と重大な決定を下している英政府だが、今後に向けて喫緊の課題となるのが、ロシアに向かう代表チーム、サポーター、メディアの安全確保だ。大会開幕まで3か月を切るなか、両国間の関係が劇的に改善するとは考えられず、現地入りする英国人に対するバッシングや暴力行為などが危惧される。「外務省と大使館で確固たるガイドラインを作成して万全を期す」との声明を出したが、受け入れ先のロシア政府が協力するかどうかは不確かだ。
 
 はたして今後、事態はどのように推移していくのか、注視する必要がありそうだ。急転直下の展開で、代表チームの大会不参加という最悪のシナリオもなくはないだろう。ちなみにロシアとイングランドの両代表チームは別グループで、ともに決勝トーナメントに進出しても、準決勝まではぶつからない。