世界のフットボールシーンがそうであるように、イングランドでも観戦方法は変わってきている。かつてはスタジアムに赴くか、もしくはテレビを通してか、ファンが試合を観られる手段はふたつにひとつだった。それがいまではパソコンやモバイルなどさまざまな形でフットボールを楽しめる時代となった。
 
 それに合わせて、リーグ戦もその在り方を変えようとしている。
 
 Jリーグが今シーズンから『DAZN』と協力しながら“金J”を始めたように、プレミアリーグでも2016−17シーズンから試験的に、金曜開催が導入されている。その成果はまずまずといったところだ。
 
 現在、プレミアリーグの放映権を持つ『BT』と『Sky Sports』が、「ライブ視聴者を増やしたい」という意向で始めた試みによって、これまでに取り込めなかった視聴者層を掴めた。かく言う私も金曜開催を好意的に捉えている。
 
 イングランド国民の大部分は、金曜の夜を自宅で過ごしている。その時間をテレビ視聴に費やすのは英国の文化として根付いているため、プレミアリーグの金曜開催が定着すれば、素晴らしいエンターテインメントになりうるだろう。
 
 

 一方で、試合日にスタジアムへ赴きたいコアなサポーターたちは歓迎していない。これはクラブとして無視できない動きで、彼らはやはり貴重な支持者。例えば金曜日のアウェー遠征を強いるのはかなりのリスクだ。
 
 ホームだろうとアウェーだろうと関係なく、スタジアムで試合を観る人びとにとって、仕事終わりの金曜開催は不満の種でしかない。新たな顧客の獲得というクラブのメリットを考えれば、オーナーたちの意向に沿うべきなのかもしれないが、チームを熱くサポートするファンの想いを切り捨てるべきではない。これはなんとももどかしいジレンマだ。

 そうしたジレンマを解消するうえで、私は金曜日に開催する試合の選択が重要になると考えている。
 
過密日程などの都合は考慮したうえで、比較的移動距離が遠くないクラブ同士の試合を設定すれば、なにかしらの効果が見えてくるはずだ。実際、プレミアリーグは金曜開催に向けたメリットとデメリットを公表し、改善していく姿勢を見せている。
 
フットボールを最高のものにするためには、良い選手や監督はもちろんのこと、極上の雰囲気が必要不可欠だ。これは自宅で試合観戦する人びとも欲している要素だろう。
 
 ビジネスを優先するあまりに愛情が薄れてはならない。Jリーグでも権力者がファンの意見に耳を傾けないようでは、“金J”も頓挫する可能性はある。
 
文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)
 
【著者プロフィール】
STEVE MACKENZIE/1968年6月7日にロンドンに生まれる。ウェストハムとサウサンプトンのユースでのプレー経験があり、とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からサポーターになった。また、スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国の大学で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝を飾った。