独自の攻撃的なプレースタイルでサッカー界に戦術的革新を起こしてきたジョゼップ・グアルディオラ監督は近年、守備に比重を置く傾向が強くなっている。

 マンチェスター・シティは2015年以来、3億ユーロ(約390億円)を上回る巨額を投じて、守備陣の大型補強を敢行した。そのときに獲得したのが以下の8人だ(カッコ内は移籍金)。

GKクラウディオ・ブラーボ(500万ユーロ)
GKエデルソン(4000万ユーロ)
DFニコラス・オタメンディ(4500万ユーロ)
DFジョン・ストーンズ(5000万ユーロ)
DFバンジャマン・メンディ(4000万ユーロ)
DFダニーロ(1800万ユーロ)
DFカイル・ウォーカー(5000万ユーロ)
DFエメリック・ラポルト(6000万ユーロ)

 ニコラス・オタメンディだけはグアルディオラ就任前に入団しているが、タイプ的に見ても、このスペイン人指揮官の意向を反映して獲得した選手であるのは間違いない。

 この間の総投資額が5億ユーロ(約650億円)強で、補強した新戦力の総数が20人であることを考えると、どれだけ守備の強化に力を注いできたかがわかるだろう。
 
 しかし、そのうちの何人かがスタメンで出場したチャンピオンズ・リーグ準々決勝第1レグのリバプール戦で、シティは0-3の大敗を喫した。優先課題として強化に取り組んできたはずの守備が崩壊し、グアルディオラ監督にとってはパラドックス(矛盾)極まりない結果となったのだ。

 試合後グアルディオラは、「ペナルティーエリア内での守り方が良くなかった」と敗因を述べたが、引いて守るのではなく、ボールを保持して攻めることをプレーコンセプトに掲げてきた彼のものとは思えないコメントである。

 そもそも守備陣を補強する際も、そうしたみずからの考え方を反映させた人選を行なってきたはずだった。しかし、このリバプール戦では自陣で失ったボールを奪い返すことができず、DFラインがズルズルと後退。モハメド・サラーの先制点のシーンはその最たるもので、失点の瞬間はGKのエデルソン以外、シティの選手が5人もペナルティーエリア内に位置していた。
 
 試合後、地元イングランドのメディアから一斉に叩かれたのは、インサイドハーフのイルカイ・ギュンドアンをスタメンで起用し、ウイングのラヒーム・スターリングをベンチに置いた采配についてだった。そうした批判の声に対しグアルディオラは、「パスを回して試合をコントロールしたかった」と反論した。

 狙いは言うまでもなく、ボールを保持する時間帯を増やし、それを守備の安定にも繋げることにあったはずだ。ただ、その「攻撃は最大の防御」策の根底となる中盤のパスワークがままならず、ボールを回収しても瞬く間に自陣エリアの奥深くに戻される。その結果、ポゼッション戦術を前提として法外な値段で獲得した最終ラインの面々は、相手のカウンターを食い止めるという専門外のミッションを満足に果たすことができず、おのずと防戦を強いられる展開となったのだ。

 ウォーカー、ラポルト、ヴァンサン・コンパニ、オタメンディとリバプール戦でDFラインを構成した4選手が、敵将ユルゲン・クロップ仕込みのハイプレスと、ボールを奪った勢いそのままのハイスピードな攻撃の餌食に遭い、それがグアルディラの言う「ペナルティーエリア内で守備をする」という劣勢を生んだ。そもそも自陣に引いて守ることを得意とするDFたちではないのだから、彼らに3失点のすべての責任を押し付けるのは酷だろう。

 肝心の中盤が機能しなかったのが根本的な原因だが、それと同様に、怪我で欠場したセルヒオ・アグエロの不在による前線のプレゼンス不足も大きく響いた。世界屈指の金満クラブの、陣容のアンバランスさが図らずも露呈された格好だ。
 その前線の強化として、今夏の獲得をめざしているのがパリ・サンジェルマンのキリアン・エムバペだ。昨夏も獲得に動き、1億8000万ユーロ(約234億円)のオファーを拒絶された経緯があるだけに、現在はその倍近い3億ユーロを用意し、水面下ではすでにパリSG関係者にアプローチしている。

 レロイ・ザネ、ベルナルド・シウバ、ガブリエウ・ジェズスと、2016年以降はアタッカーの強化にも1億5000万ユーロ(約195億円)という大金を投じて精力的に動いてきたが、前述したように、その総投資額は守備陣の約半分。局面打開力に長けた前線のストライカーの枚数をさらに増やさなければ、シティの守備は機能しない。それがグアルディオラが導き出した回答なのだ。

文●ディエゴ・トーレス(エル・パイス紙/海外サッカー担当)
翻訳:下村正幸
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