穏やかな中にも少し張り詰めた空気。約16年ぶりにテクニカルディレクター(TD)の職に復帰した“神様”、ジーコ氏が古巣の鹿島に戻ってきた。
 
 3日に成田空港着の航空機で来日したジーコTDは、4日に鹿嶋市内のクラブハウスに姿を現わした。この日の練習前に約9分、選手たちの前で「このクラブの歴史を知った上で、自分が袖を通しているユニホームの誇りとプライドを持ってプレーをしなくてはいけない」と鹿島でプレーする重責を説くと、リーグ戦9位に低迷するチームを「鹿島は常に優勝争いをしなければいけない」と激励した。
 
 ジーコTDの役割は大岩剛監督のサポート。監督の指示に対して選手がしっかりと対応しているのか。対応していない場合は、どのような指示を出すことが最適なのかを助言したりする。当然のように戦術に口出しすることはなく、「(戦術の指揮は)監督の権限であって、僕の領域ではない。監督の評価や監督の采配など、そういうことに関して助言することは一切ない」と話す。
 
 監督以外が采配に口を出すことでチーム内のパワーバランスが崩れる。選手たちの指揮官への信頼も揺らぐことになり、ジーコTDもその点は十分に理解している。
 
 サポート役として、ジーコTDの存在は、大岩監督にとっても心強いもの。指揮官とて戦術に迷いが出てくることもある。そのような時に経験に裏打ちされた助言は、問題を打開するためのヒントとなり得る。大岩監督は「(考えを)尊重してくれた上でいい言葉をかけてくれる。感謝している」と話す。
 
 今回のTD就任の最大のメリットは、ジーコTDが培ってきた『勝者のメンタリティ』を選手たちに再確認させるという点だ。早くも選手たちは“ジーコイズム”を再認識し始め、内田は「難しい話でなく、『勝ちを求める』『グラウンドに立った時は100%で』ということを言われた。プロとして当然のことだけど、ジーコが言ってくれると違う。何もないところからこのクラブを創ってくれた。タイトルの数や(勝利にこだわる)鹿島の空気はジーコから始まった。下手なプレーはできない」とその効果を語った。
 
 ジーコTDの足跡を知らない若い世代も増えてきている。本人からその哲学を選手たちに教示させることで、鹿島というクラブの誇りを若い選手へ植え付け、これまでの伝統を継承させる。リーグ戦での低迷を脱却し、アジア・チャンピオンズリーグ、ルヴァンカップ、天皇杯と残るタイトルをすべて獲得するため、そして今後の鹿島の地位をより強固なものにするためにも、“ジーコイズム”の再注入が必要とされている。ジーコTDの目線でチームの課題を見極め、中長期的にチームを戦う集団へと育て上げていく。