高体連に所属する選手の多くはプロ入りを勝ち取る際に、クラブの練習に参加する。2、3日の場合もあれば、1週間以上の長期に渡る時も多い。その時期は最終学年を迎えてからがほとんど。とりわけ、Jリーグ開幕前のキャンプでは様々なプレーヤーに声が掛かる。
 
 もちろん、練習に参加したからと言って、全員に内定のチケットが渡されるわけではない。ふるいに掛けられ、認められた者のみが契約を結ぶ。その一方で勝ち取れなかった選手はその他のクラブのトレーニングに赴くか、大学進学を視野に入れていくしかない。

 ただ、合否にかかわらず、練習へ参加することはプロのレベルを知る機会となる。ある者は手応えを掴み、ある者は上のステージで戦う自信を失う。中には絶望する高校生もいるだろう。いくら評価をされていても、自身の立ち位置は練習に参加しないと分からない。まさに百聞は一見に如かずだ。
 
 激しい競争が繰り広げられるなか、米子北には2年次にプロの練習に参加した逸材がいる。昨年度にU-17代表を経験した高橋祐翔(2年)だ。188センチの大型レフティは中学までFWを務めていたが、高校進学とともにボランチへ転向。そして、2年次にはさらにポジションを下げ、CBとして新たなチャレンジをスタートさせた。
 
 左利きで高身長。その素材はJクラブの目に留まり、昨秋に山口の練習に参加した。だが、そこで味わったのは、現時点でプロの選手に自分のプレーがまったく通用しなかった絶望感だ。
 
「(昨年の10月にU-17)代表に初めて選ばれた経験もあったので、少しは引かずにやろうと思っていた。でも入ってみたら、代表よりも全然レベルが高くて、自分が通用する部分はひとつもなかったので、プロは厳しいなと実感した」(高橋)
 
 これまでは高校生が相手だったため、高さを生かしたプレーをしていれば、完敗する場面はほぼない。だからこそ、山口での経験は強烈であり、高橋の意識を変えるきっかけとなった。
 髙橋は山口の練習参加後からピッチ内外の取り組みを見直す作業に着手。「本当にプロでやっていくのだったら、この経験を生かしてやっていくしかない。それは代表の時よりも強く感じた」と本人が話した通り、米子北の中村真吾監督に指摘されていた食事の摂り方に気を遣うようになった。

 筋力トレーニングを積極的に行ない、プレー面でも山口の霜田正浩監督に指摘されたステップワーク、パススピード、ヘディングの強化に邁進。今では中村監督から「下手だから通用しないというのを本当に理解したと思う。泥臭く戦わないと守れないことも含めて気が付いたと思う」と認められるまでに成長を遂げた。
 
 今冬の高校サッカー選手権では大観衆の前でのプレーに慣れておらず、過緊張から本来のパフォーマンスとは程遠い出来。チームも2回戦敗退し、成長した姿を見せられなかった。だが、それも自身の経験として捉え、日々歩みを進めている。

 現在、高橋の目標はプロ入りだ。大学経由なのか、それとも高卒で上のステージを目指すのか。答えは出し切れていないが、どんな結果であったとしても山口で過ごした日々が大型レフティの原点にある。

取材・文●松尾祐希(サッカーダイジェストWEB編集部)