[J1第3節]横浜2-2川崎/3月10日/日産ス
 
 84分だった。川崎の長谷川竜也が左サイドから逆サイドを狙ってクロスを放り込む。大外で待ち構えるのは「188センチ」のレアンドロ・ダミアン。だが、元セレソンのFWは、横浜守備陣の懸命なディフェンスの前に、思うようにシュートを打てなかった。L・ダミアンに自由を与えなかったのは、「170センチ」の喜田拓也だった。
 
 両者が激しく競り合った後、L・ダミアンは何事もなかったかのように態勢を整えたが、喜田は相手のパワーに押されて思わずピッチに倒れ込む。だが、ゴールは許さなかった。約20センチ近くの身長差を埋めた喜田のファインプレーだった。
 
「瞬間的に“危ない”って察知して、ファーが空いているのも分かっていたし、そこに走り込んでくるだろうなとも思った。最初、ダミアン選手だとは分からなかったけど、フロンターレの選手がいるのは把握していた。そこに上手く入り込んで、予想通りのボールも来た」
 
 その優れた危機察知能力はもちろん、決して大柄とは言えない身体を思い切り投げだして、体格差で勝るL・ダミアンに競り負けなかったのも見事だった。
 
「もう無我夢中ですね。最初は外に出そうと思ったけど、(後ろに)相手がいるから。触られたとしても自由にやらせない。結果、ふたりでガチャーンとなった感じ」
 
 喜田の“ビッグセーブ”はまだある。21分、横浜の最終ラインの背後を突いた家長昭博に強烈なシュートを浴びるも、これは守護神・飯倉大樹の好守でストップ。そのこぼれ球をL・ダミアンが詰めようとしていたが、間一髪、喜田がその手間でボールをカットする。何気ないワンプレーだったかもしれないが、あの場面で喜田がいなければ、間違いなく、L・ダミアンに押し込まれていただろう。
 
「大樹君、(CBの)チアゴ(・マルチンス)やシン(畠中槙之輔)、両SBもそう。後ろの選手たちは、常に危険にさらされながらプレーしている。そういったところで、自分も仕事をしないと」
 
 アンカーとして幅広いエリアをカバーしながら、攻守に積極的に顔を出し、献身的なプレーでチームを鼓舞する。たしかに最初の失点では、飯倉との意思疎通が上手く取れず、飯倉からの縦パスを受けられずに、相手にカットされ、そこからの流れで失点を招いた。ただ一方で、その後の失点してもおかしくないピンチを喜田が防いだのも事実だ。
 
「基本に忠実に、諦めないで戻る。最後まで何が起きるか分からないので」と語る喜田は、「自分が特別、良くやっていたとは思わない」と謙遜する。「みんなハードワークしていた。みんな頑張っていた」。チームメイトの踏ん張りに、自分も勇気づけられた。喜田の奮闘もまた、周囲を鼓舞したはずだ。そうした相乗効果が、開幕から2勝1分の戦績で勝点7の3位と好調をキープする横浜の原動力になっているのだろう。
 
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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