端的に表現するなら、「観ていて楽しいゲーム」だった。

 日本代表は横浜で、コロンビアに0−1で敗れた。アジアカップ決勝に続く黒星で、ロシア・ワールドカップで唯一倒した相手にホームで苦杯を舐めたことになる。数多のチャンスがありながら得点もゼロに終わった。いろいろと批評されているが、わたしは「なにがいけない?」と問いたい。

 すべてが上手く機能していたとまでは言わない。それでも、実に娯楽性に富んでいて、有意義な90分間だったのは間違いない。終始トライをしたからこそ、掴んだ手応えと収穫があり、浮き彫りになった課題もある。さらなる進歩に繋がるゲームだった。

 コロンビア代表は新監督カルロス・ケイロスの下、強力なスカッドを擁して来日した。多少移動の疲れや時差ボケはあっただろうが、試合開始直後から高いモチベーションを随所で覗かせ、日本に襲いかかってきた。ワールドカップの苦い記憶を払拭しよう、復讐を果たそうと躍起で、勝利への渇望を前面に押し出していた。コパ・アメリカを睨む日本代表にしてみれば、願ってもない理想的なテストマッチの相手となったのだ。

 やはりパス回しは正確で分厚く、ボールを奪ってからのショートカウンターも鋭い。ハメス・ロドリゲス、ラダメル・ファルカオが絡む攻撃には常に怖さがあった。それでも日本の守備陣は昌子源、冨安健洋を中心に随所で冷静かつ的確に対応し、よく封じ込んだと言える。結果的に奪われた失点はPKによる1点だけだったわけで、守備面で悲観するような失敗は見当たらない。

 
 課題が散見されたのはやはり最前線、センターフォワードのところ。代表チームが国際舞台で結果を残すためには、どのポジションでも最低ふたりの計算できる選手が必要だ。ひるがえっていまの日本代表はどうか。ほとんどのポジションでその条件を満たしつつあるが、センターフォワードだけはどうにも心許ない。大迫勇也の存在を脅かすほどの“顔”がまだ見えてこないのだ。

 今回のコロンビア戦で森保一監督は、積極的に3人の候補者を試した。それぞれ良い働きを示したものの、結果はいまひとつだったと言わざるを得ない。
 代表デビューを先発で飾った鈴木武蔵は運動性能が高く、絶えず走り回ってプレーに絡もうと奔走した。決して悪い出来ではない。ヘディングで惜しいチャンスもあったし、得点を決めていればもっと波に乗れたのかもしれない。だが、元来が大迫のようなターゲットマンではないだろう。求められるボールキープ力や、エリア内での細かい技術などは発揮できなかった。今後も期待をかけたいが、フィットするのはそう簡単ではない。

 ふたり目は、鈴木の交代後に前線へ躍り出た南野拓実だ。やはり最前線でひとり身体を張るタイプではなく、堂安律、中島翔哉、柴崎岳らとリズミカルにパスを繋ぎながら前進していくのがスムーズ。このチームではトップ下が最適なのだろう。もうひとりの鎌田大地はもっとプレータイムを与えてもらいたい。コロンビア戦ではほぼ個性も存在感も見せることなく、タイムアップを迎えてしまった。

 とはいえ試合全体で考えれば、ポジティブな面が圧倒的に多い。森保監督は4−2−3−1のシステムを変えず、新しいメンバーは少しずつチーム状態を観察しながら投じていった。オプションを増やす試みは奏功したとわたしは見ている。

 継続して存在感を示したのが、主将を務めた柴崎である。もはや攻撃のタクトを振る司令塔の枠に収まらず、守備面でも抜群の位置取りから敵にプレッシャーを掛けるなど、チームの中軸としての自信に満ち溢れている。機を見て繰り出す縦パスは見事だったし、ピンチの際に素早く帰陣して芽を摘み取るあたり、センスの良さを感じさせる。森保ジャパンでは新参者の山口蛍、小林祐希を上手くサポートし、バランスの良い2ボランチを形成していた。

 
 両サイドバックの佐々木翔と室屋成の良質なパフォーマンスも目を引いた。今回は長友佑都と酒井宏樹の招集が見送られ、絶好の出場機会を得たわけだが、文句なしに活用できるタレントであることを証明。ファーストチョイスになってもおかしくない、そう思わせるほどの安定感だった。とくに右サイドで奏でた室屋と堂安のコンビネーションは円滑で、迫力もあっただろう。

 センターバックの冨安と昌子のペアも、初めて組んだとは思えないほど巧みに連動していた。互いの特長を引き出し合えていた、と表現してもいい。第1ゴールキーパーの争いはハイレベルで興味を引くところ。この日は東口順昭がPKこそ決められたものの、ほぼ完璧に近いセービングを見せて森保監督へのアピールに成功した。

 中島と堂安はやはり同時に両サイドで起用すると、大きな相乗効果をもたらす。コロンビアのような強豪国を相手にしても脅威となれることを実証した。後半途中から登場した乾貴士は痛快きわまりない。ややトーンダウンしていた日本の攻撃にふたたび活力を与えていた。
 香川真司についてはいろんな意見があるだろうが、個人的には及第点以上の出来だったと思う。

 ベンチスタートで戦況を見守り、後半になってから得意のトップ下に配備されて、みずからの責務を全うした。やはり素晴らしいプロだなと感じる。まだ30歳で、言うまでもなく森保ジャパンの近未来を見据えれば重要な戦力。今回合流できたことそれ自体が、ひとつの収穫と捉えていいはずだ。

 圧巻だった前半の内容に比べて、後半はよりコロンビアに主導権を握られてしまったが、それでも日本は最後まで攻めの姿勢を崩さなかった。中島がバーを叩く惜しいミドルシュートを放ったし、基本的には90分間を通して互角に渡り合ったと評価している。

 結果的に連敗となったが、これは親善試合なのだ、負けることだってある。アジアカップからの上積みをさっそく垣間見せてくれただけに、火曜日のボリビア代表戦も実に楽しみだ。

 きっとまた、エンターテインメントに溢れた試合になるだろう。

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著者プロフィール
マイケル・プラストウ/1959年、英国のサセックス州出身。80年に初来日。91年に英国の老舗サッカー専門誌『ワールドサッカー』の日本担当となり、現在に至る。日本代表やJリーグのみならず、アジアカップやACLも精力的に取材し、アジアを幅広くカバー。常に第一線で活躍してきた名物記者だ。ケンブリッジ大学卒。