キリンチャレンジカップの日本対コロンビアは、0−1で日本が敗れた。
 
 森保ジャパンは発足以来、初めてゴールネットを揺らせず。17本のシュートを打ったが、崩し切る決定機は少なかった。この試合で生まれたゴールは、微妙なハンドによるPKの1失点のみ。消化不良感は否めない。ただ、見せ場がなかったわけでもない。中島翔哉のアドベンチャー、香川真司や乾貴士が織り成すハーモニーには舌鼓。ミネラル含みの塩試合だった。
 
 前半は日本優位で進んだはずだが、どこで流れが変わったのか。それはやはり57分、コロンビアがドゥバン・サパタを投入し、4−2−3−1から4−4−2へ変化したところだ。ただし、それだけではない。カルロス・ケイロスの采配は、じわじわと根回しを済ませ、57分の交代カードで、一気に回収したと言える。何が起きていたのか。
 
 試合の流れを振り返るなら、ダブルボランチに着目するのが良いだろう。日本の4−4−2の守備が機能した前半、柴崎岳と山口蛍は、ポジションのかみ合わない相手ボランチ、ジェフェルソン・レルマ、ウィルマル・バリオスに対し、前へ出て激しく寄せ、かなりのボールを奪った。
 

 柴崎と山口が前へ出れば、バイタルエリアは空きがちだ。しかし、相手センターバックがボールを持ったとき、中島翔哉と堂安律は中へ絞って縦パスのコースを切り、そこからサイドへ追い込む。ディフェンスラインも押し上げ、全体をコンパクトに保つ。前半は4−4−2の守備が機能し、日本がボールを奪って多くのカウンターを仕掛けた。
 
 また、コロンビアは日本のプレスを回避するため、バリオスとレルマの片方を最終ラインに下げ、3バック化させた。しかし、それはボールを落ち着けるだけで、堂安や中島を迷わせるような効果的な持ち運びは見られなかった。
 
 変化が起きたのは、後半スタートから。
 
 コロンビアはサイドバックが高い位置へ上がってきた。中島と堂安が、中切りからのチャレンジを、出来ない位置まで。ジェリー・ミナやダビンソン・サンチェスがボールを持ったとき、ハーフレーンが空いていれば、ウイングに縦パスを当て、サイドバックへ落とす。一方、中島らがハーフレーンを遮断すれば、サイドバックへ直接展開する。中島、堂安の守備は、徐々にハマらなくなってきた。
 
 さらにコロンビアは3バック化をやめ、センターバックが追い込まれそうになると、早めにロングボールを蹴った。柴崎と山口がねらっているので、ボランチには当てない。このロングボール攻勢を放置すると、日本の最終ラインと相手の前線が4対4の同数になるため、山口も前半のように果敢なプレスに行きづらくなった。
 
 後半のコロンビアは、日本の中盤4人、中島、山口、柴崎、堂安に問題を与えた。それが機能し始めたのを確認すると、すぐにケイロスは交代カードを切る。ドゥバン・サパタとラダメル・ファルカオの2トップとし、ハメス・ロドリゲスを右サイドハーフへ移す。4−4−2へ。
 
 すでに高い位置を取っている両サイドバックに呼応し、右のハメス、左のルイス・ムリエルが中へ入り、前線に人を送り込む。日本のミドルプレスを無効化したうえで、縦に速い攻撃に切り替えてきた。守備時も、前半より積極的にハイプレスをかける。後半のスタートで戦術変更の効果を見極めたうえで、一気に勝負をかけたのが、57分のサパタ投入だった。ケイロスは、やはり良い監督だ。初陣ながら、巧みな采配で試合をコントロールした。
 

 ただし、これが日本の敗因とは、個人的には考えていない。
 
 そもそも前半は、日本のほうが戦術はハマっていた。後半序盤はコロンビアに押し込まれたとはいえ、71分の乾と小林祐希の投入後は、日本が握り返している。柴崎を最終ラインへ落として3バック化し、室屋と佐々木翔を高い位置へ上げ、乾、香川、中島が中へ入る。4−4−2破りの定石で、終盤は再び、日本がチャンスを量産した。
 
 振り返ると、90分のうち戦術がハマった時間が長かったのは、むしろ日本だ。しかし、0−1で負け。結局、ゴール前の攻撃力、守備力の差で負けた。これを「内容は良かった」と振り返っていいものか。今、モヤモヤしている最大の要因はそこだ。
 
 ゴール前に決定的な力の差があれば、その差は永遠である。どうゲームを構築しても埋まらない。このような0−1こそ、重い。
 
取材・文●清水英斗(サッカーライター)