3月のAマッチウィーク、タイ代表は中国広西壮族自治区首府・南寧で行なわれたチャイナカップ2019に招待出場した。4か国参加のノックアウト方式で行なわれた初戦は、アジアカップで屈した中国代表相手にチャナティップ(札幌)のゴールで勝利。しかしウズベキスタン代表を破ったウルグアイ代表との決勝では0-4の完敗。直近のFIFAランク7位の強豪相手にはまったく歯が立たなかった印象だった。
 
 試合後には多くのタイ代表選手がユニホーム交換で得た“お宝”を手に満面の笑みで記念撮影に納まる様には、彼らの立ち位置を理解したのだが……。
 
 そんなタイ代表はここ数か月、今ひとつ調子が掴めず、東南アジアにおいても強さを発揮できていない。昨年末に行なわれた“東南アジアNo.1”の称号を決するAFFスズキカップでは、準決勝で格下マレーシア代表に敗れ大会3連覇は夢と消え、名誉挽回と臨んだ1月のアジアカップではASEAN最高位を得られずベスト16で敗退(ベトナム代表がベスト8入り)。
 
 また今週行なわれていた東京オリンピック出場権が掛かるU-23アジア選手権の予選では、同組となったベトナム代表に歴史的大敗(0-4)を喰らうものの、開催国枠(来年1月にタイで開催)での本選出場が決まる実状。ここまで来ると誰もが“王座陥落”を認めざるを得ない。彼らからすればプライドが引き裂かれる厳しい立場に立たされている。
 
 とはいえ、東南アジアにおける最高峰リーグはタイリーグであることに揺るぎはないだろう。ライバル国代表に名を連ねるトッププレーヤーたちは現状、タイでのプレーにステイタスを感じ集ってくるのだ。今季もフィリピンやミャンマー、ベトナムといったASEAN諸国から21名もの選手がタイリーグ1(1部/以下、T1)でのプレーを選んだ。
 
 中断期間前最後のリーグ戦2試合(ポリス・テロ対BGパトゥムユナイテッド/2部、ポート対PTTラヨーン/1部)を現場取材したのだが、“サラブレッドスター”シンガポール代表DF、イルファン・ファンディ(BGパトゥムユナイテッド)や、タイでのプレー経験が豊富なインドネシア代表DF、ヴィクター・イグボネフォ(PTTラヨーン)らは助っ人らしい際立った振る舞いを見せていた。
 
 タイリーグは今季、T1での外国人選手の登録制限を撤廃、同時出場枠も「3+1(アジア枠)+3(ASEAN枠)」へ変更決定を下した。制度を最大限利用すれば、11名のうち実に7名を外国人助っ人で埋めることが可能となったのだ。
 
 南米や欧州といったフットボール先進国への憧れから海外志向傾向が強まっている昨今のタイリーグ。昔は費用対効果の良いアフリカ人選手を重用するクラブが非常に多かったのだが、昨今はブラジル人やスペイン人といった“分かり易い”選手も多くなった。また枠拡大の流れに伴ったアジア人選手の流入もより一層増している。
 
 しかしこの王座陥落という失意の中で、この流れは自国選手のハイレベルな成長の場を制限することをも意味する大きな問題でもある。タイサッカーは何処へ向かおうとしているのだろうか。正直、疑問でならない。
 
 今季のタイリーグで、即戦力として期待され移籍してきた“元日本代表”選手がふたりいる。細貝萌(ブリーラム・ユナイテッド)とハーフナー・マイク(バンコク・ユナイテッド)だ。また開幕ダッシュに失敗したラチャブリー・ミッポン(T1)は、ミラン黄金期メンバーのひとりである元イタリア代表FW、マルコ・シモーネの新監督就任を発表し賑わせている。良くも悪くも話題多きタイリーグは、今週末に再開する。
 
取材・文●佐々木裕介(フリーライター)