フランス人をあっと言わせてきたエドゥアルド・カマビンガが、11月4日についにフランス国籍を取得。さらに17歳の誕生日の翌11日には、急きょエスポワール(U−21)フランス代表にも招集された。

 これで、この神童が東京オリンピックに登場する可能性も出てきた。その事実に、現地は興奮している。

 カマビンガは今シーズン、たった16歳にもかかわらずスタッド・レネ(レンヌ)の中盤で先発を確保し続け、年齢を感じさせない冷静かつ堂々たるプレーを披露している。あまりの早熟ぶりに、バルセロナ、アトレティコ・マドリー、マンチェスター・ユナイテッドなどのメガクラブも定期的に視察にきているほどだ。4月のリーグアン・デビュー以来、順調に出場を重ね、10日のアミアン戦で23試合目を刻んだ。

 そんなカマビンガには同情が集まっていた。というのも、2歳でフランスにやってきて、フランスの教育を受け、フットボーラーとしてもレンヌで育成されてきたというのに、申請しても申請しても、フランス国籍が下りなかったのだ。

 実はエドゥアルド少年は、出生地であるアンゴラのパスポートだけを所持していた。両親がコンゴ人のため、コンゴ国籍もある「はず」だが、一家がフランスに定着した数年後、火事で家が焼けた。これでカマビンガ一家は住居も家財道具もすべて失い、身元を証明する書類を全て焼失してしまったのである。

 当時、少年の成長を見守っていた人々の支援で、住居と家財道具は何とかなったが、フランス国籍だけは書類不十分のためか、なかなか下りなかった。

 ところが今年、カマビンガの尋常ではない実力を発見した世論が、一気に味方した。国籍取得のために尽力してきたレンヌも、当局に一層の圧力をかけた。さらにフランス・フットボール連盟(FFF)も県庁も動き出し、ついに11月4日、家族ともども、めでたくフランス国籍を手にしたのである。

 よほど嬉しかったのだろう。カマビンガは、照れながらフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」をアカペラで歌い、笑顔と歌声をソーシャルネットに公開した。そして迎えた10日、17歳の誕生日は、初めてフランス人として祝った記念すべき日となった。
 こうなると誰もが、あることを思わずにいられなかった。そう、将来的なフランス代表への道である。これで神童は招集されうる存在になったのだ。

 国籍授与のタイミングが遅かったため、7日に発表された、グルジア戦(15日)とスイス戦(19日)を戦うエスポワール代表の招集には間に合わなかったが、2020年が明ければ選出される可能性が高いとみられていた。

 ところが、A代表のブレーズ・マテュイディが故障で離脱したのに伴って、エスポワール代表に選出されていたマテオ・ゲンドゥジがA代表に呼ばれたため、エスポワール代表のシルバン・リポル監督は急きょカマビンガをメンバーに加えたのだった。

 ということは……。もしエスポワール代表にフィットし、好調を維持することができれば、神童カマビンガが東京オリンピックに登場するかもしれない。A代表やユース世代とは違い、五輪では結果を残せていないフランスにとって、東京での金メダルはいわば悲願であり、チームの底上げは不可欠なのだ。
 
 もちろん、いくら神童と言っても、個人でプレーするわけではない。チーム戦術にフィットできるか、という問題もあるし、MFであればなおさらだ。FWであれば、キリアン・エムバペのように独力で「超」がつくスペクタクルを見せることもできるが……。

 さらに言えば、「17歳でいくら凄くても、その後のキャリアが成功するとは限らない」というのが、フランスの大切な教訓にもなっている。そのためレンヌのジュリアン・ステファン監督は、周囲のオーバーヒートを警戒。少年を必死に保護しながら、慎重にこう指摘している。

「この調子でいけば、彼の前には輝かしい未来がある。極めてハイレベルなクラブでプレーできるだろうし、もしかすると代表でもプレーできるだろう。ただ、まだ越えねばならないステップがあり、これほど若い選手の場合は、急ぎすぎてもいけない。

 実力を証明し続けねばならないし、仮に窪みに落ちることがあっても、驚いではいけない。彼に直ちに全てを要求してはならないのだ」
 だが――。この神童が東京オリンピックに出現する可能性は、やはりゼロではない!

 しかも、あのエムバペまでが、その舞台に立ちたがっているのだ。こちらはA代表でEURO2020に出場するのはほぼ確実で、クラブとの関係で五輪まで参加できるは不透明だ。ただ、A代表のディディエ・デシャン監督は11日、「私はエムバペの雇用者ではない」と答え、所属クラブの判断に委ねる可能性を示唆した。

 エムバペ、そしてカビマンガの参加が現実味を帯び、東京オリンピックの行方が、いよいよ楽しみになってきたことは間違いない。

 カマビンガは、レンヌ育成センター寄宿舎の部屋を出て、両親とともにレンヌ近郊の家に住むようになったところだ。少年にとって2019年は、忘れられない吉年になったようである。

 とんとん拍子で急上昇する新鋭は、どこまで到達するだろうか。エドゥアルド・カマビンガ。その名前を覚えておいて損はないだろう。

文/結城麻里
text by Marie YUUKI