真剣勝負の2022年カタール・ワールドカップ・アジア2次予選キルギス戦(14日=ビシュケク)を長友佑都(ガラタサライ)・吉田麻也(サウサンプトン)ら主力組で確実に勝利し、19日の親善試合・ベネズエラ戦(大阪)で控え組の底上げを図る――。それが日本代表・11月シリーズに挑むに当たっての森保一監督のシナリオだった。


 前者の方は南野拓実(ザルツブルク)と原口元気(ハノーファー)の2得点で思惑通りの白星を手に入れたが、後者の方は前半だけで4失点という信じがたい惨敗。主要メンバーとそれ以外の大きな実力差がクッキリと出る最悪の結末になってしまった。

「本当に今日は半分以上(2次予選に)出てない選手でしたし、『俺らでもやれる』というのを見せないといけない試合だった。こういう試合をしてしまうと底上げにならない」と原口が苦渋の表情を浮かべた通り、ベネズエラ戦前半の日本は手も足も出ない状況だった。開始8分に室屋成(FC東京)がソテルド(サントス)との1対1で対応できずに上げられたクロスをサロモン・ロンドン(大連一方)に打点の高いヘッドで決められ先制点を献上。これを皮切りに、普段控えに甘んじている面々は冷静さを欠き、ミスを連発。ラインがズルズルと下がり、失点を繰り返すという負の連鎖に陥った。

 畠中槙之輔(横浜)が「実力不足を痛感しました」と反省の弁を口にする一方、主力の柴崎さえもが「2-0、3-0になってしまうと心理状態を統一するのが難しい」と困惑。中心メンバーとサブの融合もうまく図れなかった。森保監督は昨年9月のチーム発足時から主力を固定しがちだったが、その弊害が出たのは間違いないだろう。
 年5回の国際Aマッチデーとアジアカップなどの大陸別国際大会を除き、ベストメンバーを招集できない代表指揮官がある程度、決まった面々でチームの成熟を図りたいと考えるのも分からなくはない。失敗が許されない2次予選になれば、より計算できる長友や吉田、酒井宏樹(マルセイユ)に頼りたくなる気持ちも確かに理解できる。

 とはいえ、彼らも2022年には30代半ばにさしかかる。怪我やコンディション不良などのアクシデントも増えてくる年齢で、カタール本番にフル稼働できるとは限らない。その鉄板守備陣への依存から脱することを考えて今回、大胆なチャレンジに打って出たのだろうが、それは無残な形に終わった。だからといって、「やっぱり長友や吉田に頼るしかない」と依存を強めたらチームの層は厚くならない。ベネズエラ戦の惨敗を今後に生かさなければ、日本代表のレベルアップはない。

 長友や吉田、酒井、柴崎、大迫勇也(ブレーメン)に代わる軸を見つけるのは容易ではないが、トライを続けていかなければ停滞感は続く。彼らのポジションに少しずつ新戦力を抜擢しながら、融合と底上げを図る術を指揮官には真剣に模索してほしい。
 
 ベネズエラ戦で屈辱を味わった選手たちも這い上がらなければ意味がない。
「今の新しいメンバーは練習を含めて大人しい。もっとガツガツしてもいい」と原口は厳しい表情で語ったが、「主力からポジションを取ってやろう」と本気で野心を抱いて試合に出た人間が果たしてどれだけいたのか。そこは大いに疑問が残る。原口や柴崎らザックジャパン時代にA代表初招集された世代は、上に本田圭佑(フィテッセ)や岡崎慎司(ウエスカ)らタフなメンタルと卓越した代表実績を誇る選手がいたから、そう簡単にチャンスを与えてはもらえなかった。だからこそ、歯がゆさは強かったのだろう。

 本来なら室屋や佐々木は「酒井や長友をサブに追いやる」くらいの鬼気迫るプレーを見せなければいけなかった。攻撃陣の鈴木武蔵(札幌)や浅野拓磨(パルチザン)も大迫や南野から定位置を奪う気概をもっと見せてほしかった。球際や1対1の改善はもちろんのこと、まずはメンタル的な部分を見直さなければ、個々の飛躍も、日本代表の成長もあり得ない。そこは肝に銘じるべきだろう。

 今回の収穫と言えるのは、長友や吉田ら主力組が早くクラブに戻って今後の戦いに備える時間的余裕を持てたこと、そして新戦力の古橋亨梧(神戸)が持ち味のスピードを発揮して流れを変えたことなどわずかな点にとどまった。11月シリーズを2チーム編成で戦った意味がそれくらいしかないのはあまりに残念だ。

 U-22コロンビア戦(広島)を含め短期間で3チームを見た森保監督も全てが中途半端な印象が強い。課題山積の日本代表を立て直すのは簡単ではないが、現実を直視するしか、現状を打開する術はない。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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