新型コロナウィルスの感染拡大で中断中のラ・リーガ。直前に行われた第27節でレアル・マドリーが敵地でベティス相手に不覚を取り(1-2)、前節直接対決のクラシコを制して(2-0)手にした首位の座をバルセロナに明け渡した。ただホームにレアル・ソシエダを迎えたバルサもリオネル・メッシのPKによる虎の子の1点を守り切るのが精一杯。試合内容は決して褒められたものではなかった。

 現在の緊急事態が収束に向かいラ・リーガが再開したとして、優勝争いは完全に2強に絞られた感があるが、両者の戦いはまるでどちらが取りこぼしが少ないかをお互い譲り合いながら競い合っているようでもある。しかも憂慮すべきは、そのなんとも締まりのないこの展開にリオネル・メッシまでもが巻き込まれている点だ。

 エクスキューズはいくつかある。とりわけ相棒のルイス・スアレスの怪我による戦線離脱で前線の破壊力が大幅に低下。メッシが何とかその穴を埋めようと奮闘してはいるが、何分すでに32歳だ。数年前に比べて独力で局面を打開する頻度は減っており、それだけ周囲のサポートを必要としている。

 しかし実情は、メッシがゴールをこじ開けなければならないシーンが多く、負担は高まる一方だ。アウェーならいざ知らず、最近はカンプ・ノウでもそうした現象が起きている。

 メッシはもちろんチームの絶対的なリーダ―であり続けている。しかしいつまでも彼におんぶ抱っこの状況では将来の展望が開けてこない。メッシをはじめとしたルイス・スアレス、ジェラール・ピケ、ジョルディ・アルバ、セルヒオ・ブスケッツといった重鎮組を主役の座から追いやるくらいの若手の突き上げが待望されて久しいが、そのタイミングがいよいよ待ったなしの状況になっている。

 チームの新たな旗頭にならなければならないのは、テア・シュテーゲン、フレンキー・デヨング、アントワーヌ・グリエーズマン、アンス・ファティといった面々だ。もちろんその中でメッシの果たす役割は重要だが、時には彼らのサポートに回るくらいの状況になったほうが、チームの歯車が噛み合ってうまく回転するはずだ。もちろんそれにはフロント幹部と現場首脳陣の毅然とした実行力が不可欠だ。
 
 バルサのサッカーは伝統のスタイルからかけ離れたと言われて久しい。いうなれば劣化でもあるが、それはエルネスト・バルベルデやキケ・セティエンといった近年の監督がクラブ内でも影響力を発揮するメッシをはじめとした重鎮組のプレースタイルに最大限寄り添おうとした結果でもある。

 年長者のパワーに気圧されて若手の存在感は希薄で、監督も結果を最優先してベテラン偏重の消極的な起用法に終始しがちだ。自分たちがこれからのバルサを引っ張るという強い気概を持った若い選手の台頭が待望される所以でもある。

 盛り上がりに欠ける優勝争いに埋もれてしまうようなメッシを、我々周囲の人間は望んでいない。しかしソシエダ戦がそうだったように、最近の彼は試合中、苦悶の表情を浮かべることが多くなっている。

 このエースがはたしてこの先何年バルサでプレーするかは分からない。しかしアスルグラーナのユニホームを身に纏っている間は、首脳陣は10番の特性をしっかり理解して、そのスペシャルな才能に相応しい舞台を用意する義務がある。

 メッシに「無力」や「苦痛」といった“負の感情”似合わない。

文●ラモン・ベサ(エル・パイス紙バルセロナ番)
翻訳●下村正幸

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